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看護師の不思議な体験談 其の十二

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「私、先に仮眠していいっすか。」
 そう後ろから声をかけられ、振り向いた。見ると、ノーメイクになって枕を片手に後輩が立っていた。
「『いいっすか』って。それ、もう寝る気満々の格好じゃん。」
 呆れて、何も言えん。
「はい。もうコンタクトも取ったし、何も見えません。」
 目を細める表情がおかしくて、思わずプッと吹き出す。
「もう、あんたは。はい、お先にどうぞ。」
 そう言いながら、目覚まし代わりに使用しているタイマーを手渡した。
「私、陣痛室前の廊下んとこで寝ますんで。静かにして下さいよ。」
「はい、はい。」
 陣痛室の前の廊下には、家族が分娩を待つためのソファーがある。背の高い後輩Kが寝ると足がはみ出てしまうのだが、そこがお気に入りらしい。

 後輩Kが仮眠に入り、カルテの入力やら委員会の記録をしながら、先輩Nさんと話をした。日勤帯ではゆっくり話をする暇などないので、来年度の年間計画を真面目に話したり、若い研修医のウワサ話で盛り上がったり。
 コーヒーを飲みながら、2人で話していると、扉を乱暴に開けながらKさんが戻ってきた。その表情は、さえない。
「寝れなかったの?」
「はあ、ていうか。超やばいっす。杉川さん、さっきはすいませんでした。」
 Kさんが素直で気持ち悪い。
「どうかしたの。」
「あの、現実か夢か分からないんですけど…。」