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頑張ってる理由

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 毎日があっという間に過ぎて行く。
 時々、「何でこんなに働いているんだろう。自分のやりたいことが何もできない。何で、こんなに頑張っているんだろう。」と立ち止まることがある。
 休日返上のタダ働きや、毎日の時間外勤務。上司と後輩との板挟み。家に帰れば休むことのない家事。滞るストレス。発散させる暇もない。
 徐々に心の余裕がなくなる。
 イライラ、ピリピリ。
 ほんの些細な事で、感情的に怒ってしまう事もある。完全な八つ当たりだ。
 自分が悪いのは良く分かってる。胃が痛い。つらい。

 夫の帰りは遅いため、子ども2人と私の、3人での夕飯。ある時、千恵の食事のスピードが緩まった。
 見ると、3歳の千恵が眉を下げて、悲しそうな表情でこちらを見ている。
「どうしたの?」
 そう聞くと、千恵の大きな瞳が揺れる。
「だって、かあちゃんが悲しい顔しとるよ…」
 千恵が頼りない声でつぶやいた。驚いて、言葉に詰まった。
 隣に座っている竜輝も、眉を下げ、千恵と同じ表情で固まっている。
「かあちゃんが悲しいと、竜輝も悲しい」
 自然に涙が出た。勢いがついた涙は、嗚咽とともに溢れだす。
 子どもたちが、私のそばに寄り、背伸びをしながら私の頭をなでる。
 こんなに小さな子たちが、人の悲しみに気付き、一緒に心を痛めることができるのだ。
 それなのに、私は…。

 小さな手が、私の頭をぐしゃぐしゃにかき回す。
「かあちゃん、千恵ちゃんがいるからね!」
「かあちゃん、怖い事があったら竜輝が守ったげるから」
 こんな時に、そんな言葉は、反則だわ…。
 涙、止まらないじゃない。

作品名:頑張ってる理由 作家名:柊 恵二