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i feel the gravity of it all

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それから数年して、じりじりと拡大していく東の国の紛争に我慢の効かなくなった西の国は宣戦を布告。所謂“先の大戦”の勃発である。
その時、身寄りのなくなった俺は避難民のテントに居た。
もちろん避難民としてだ。そこには、国境線近くの集落から何百人もの人間が身を寄せていた。俺はその中に紛れ込む。
あの時に俺は死ぬはずだったのだ。だから、狩り忘れた俺の魂を死神が今さらになって取りにきたのだ。
避難民のテントは当時暗躍していた南の帝国の能力者部隊に、襲撃を受けたのだ。目的は、避難民の慰安に訪れていた元老院の穏健派トップだった。このせいで、東の国の戦争動員数は加速度的に上がった。
一発の銃声が高らかに響き、人々の悲鳴を呼んだ。
今度の俺は、殺戮の一部始終を見ていた。逃げ惑う人々の背中は切り裂かれ、叫ぶ子供の喉はかき切られた。倒れた人間の上を踏み荒らし、
爆煙に吹っ飛ぶ身体。何かの焦げるのと、血のにおい、耳を劈く轟音が、俺の頭に靄をかけた。

「お迎えだ」

それは、死神だったのか。それとも、楽園へと誘う天使だったのか。
「お前、あの時のガキだろ」
この濃紺の髪、見たことがある。だけど瞳はあの時と違う、燦爛ときらめいている。この惨状が、楽しいのだろうか。いやみな眼つきだ。ああでも、この男の真っ赤な瞳から目が離せない。
「やっぱりな、能力者だ。それも、一級の」
「ロマが言うなら間違いないな。連れて行こう」
男の後ろから、別の男が姿を現した。燃える様な赤毛の男である。
気が付けば、周りにいる生きた人間は、自分と、軍服をかっちり着込んだ奴らだけになっていた。
「わかってないのか?お前は能力者だ。歓迎するぜ、同志」





「ちょっといいか、天原」
「なんだ、ロマか」
「呼び捨てはないだろ。いくつ年上だと思ってんだ。仮にも上官を」
「くそ野郎でないだけましだ」
辺境監視部署長補佐のロマ・ジプシーは、滅多に俺のところに来ない。
俺からは絶対、ロマに会いには行かないし、同じ建物で生活して、仕事しているというのに、顔を合わせるのは久し振りだった。人相なんて、そうそう変わるものではないが、ロマは相変わらずのいやみな眼つきで、ざんばらに伸びた濃紺の髪をてきとうに束にしている。
作品名:i feel the gravity of it all 作家名:塩出 快