炉黒一琉の邂逅(2)
「炉黒君、どうしたのー?」
すると右後ろを歩いている鬼火ちゃんが、僕の服の袖口辺りを引っ張っている。
「怖気づくなよ、炉黒君。神隠しに会ったからと言っても、死ぬわけじゃないんだ。もし炉黒君に何かあったら私が守るぞ」
を 次に左後ろを歩いている蛹裏が気合を入れるとともに、僕を励まし始めた。二人とも後ろ歩いていても、僕の雰囲気が変わったのが分かったのだろうか。何故だか、不思議と心が安らいだ。
「鬼火ちゃん、大丈夫。何でもないよ」
僕は、鬼火ちゃんにそう返すと少し立ち止まって頭をよしよしと撫でてあげた。
「きゃはっ」
鬼火ちゃんは、いつものように目を細め満面の笑みで喜んでくれている。
そして、次に。
「蛹裏、女が男を守るんじゃなくて、男が女を守るんじゃないのか?」
「だって、君にはその力がないのだろう?」
「無いかもしれないけどね、何かあったら僕が守るよ。約束だ」
「んなっ・・・・・・な、何を言ってるんだ・・・・・・」
僕の、らしくないセリフに蛹裏は暗めのスカイブルーの瞳を見開き驚いているようだった。確実に顔は赤面しているだろう。暗くて良く見えないのが残念だ。
けれど、僕の言葉と同時に硬直しているということは相当驚いたのだろう。
「うぅー・・・・・・」
そして、とても困っているようでもあった。
「・・・・・・頼んだぞ」
蛹理はそう言うと、自らの足元を見るように俯いてしまった。何故だか知らないが、その仕草がとても愛らしく見えてしまった。鬼火ちゃんとまた違う愛らしさ。
「蜻蛉さん、続きを」
僕は、気を取り直し、蜻蛉さんを促した。
「オーケイ、炉黒君。それでね、炉黒君。藪地蔵の森には道標があると思うんだよ。これもあくまで仮定だけどね」
作品名:炉黒一琉の邂逅(2) 作家名:たし