炉黒一琉の邂逅
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「・・・・・・やっと着いた」
ライダーと約二時間に及んだ当てのないドライブの末辿り着いた築四十年は優に超えているであろう古ぼけた二階建てアパート。周辺には街灯も少なく朝方の薄暗い雰囲気とも混ざり合い、そのアパートが醸し出す様相はさながら廃墟も同然だった。
廃墟というのは言い過ぎなのかもしれないが仕方ない。この古ぼけたアパートは八部屋を備えている。どれも1DKという一人暮らしには一般的な部屋だ。
現在このアパートには蜻蛉さんを含め、四人の住人が住んでいる。蜻蛉さんも変人の代表的な人間だが他の三人も負けず劣らずに変わっている人たちばかりでとても愉快な人達ばかりだ。
まず初めに、101号室の住人である自称魔女である蛹裏ヴィヴィア、十五歳。親元を離れ生活している高校生。一言で言えば、電波系の人だ。自称魔女な時点でも結構電波的である。もしかしたら本当に魔女なのかもしれないし違うかもしれない、結構謎に包まれた女性でもある。イギリス人とのハーフらしい。
次に、202号室の住人である神ノ内陣一、二十二歳。通称ヤンキ―。とにかくヤンキ―。やたらと人にからもうとするし、常にケンカ腰である。しかし、それ以上に優しさに溢れていてとてもいい人なのである。特筆すべきはアニメが大好きでロリコンというところだろうか。
次に、203号室の住人である自称殺し屋である空蝉雫、十八歳。殺し屋と言っても直接的に殺人行為をするのではなく言葉を持って人を殺すらしい。つまり端的に言ってしまえば毒舌女という訳だ。自称殺し屋、物は言いようとはこのことだろう。
そして最後に103号室の住人である蜻蛉愁一である。
「朝っぱらから人を毒舌扱いするとは度胸があるわね、炉黒君」
ふと読心術を使用され、真後ろから声をかけられた。
そこには腰まで伸びた艶のある妖艶な黒髪を纏い、整った顔立ちに黒いワンピースを初め全身黒で統一された服装をした女性がいた。
自称殺し屋、空蝉雫である。