炉黒一琉の邂逅
「炉黒君、炉黒君の後ろにいる人は誰?」
鬼火ちゃんは僕の後ろにいるライダーに焦点を合わせ不思議そうに呟いた。
「その人、私とか炉黒君と違って首から上がないよ?」
余程、興味が湧いたのだろうかライダーの元にちょこちょこと可愛らしい足取りで近付いていき、ライダーの腹の辺りを人差し指で三回ほど突っついた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ライダーも鬼火ちゃんの事を気に入ったのか、未だに不思議そうにライダーを見上げている鬼火ちゃんの額を撫で始めた。
「きゃはっ」
ライダーに頭を撫でられたことが嬉しいのか、鬼火ちゃんは顔をくしゃっとさせながら無邪気に笑っていた。本当にこうした鬼火ちゃんを見ていると、鬼であることを忘れてしまう。そして鬼というからにはいずれ別れだってくるのだ。勿論、ライダーとの別れだって確実に訪れるだろう。
「鬼火ちゃん、そいつは首なしライダーのライダーだよ。仲良くしてあげてね」
僕は二人のやり取りを見て、干渉的になりながらも鬼火ちゃんに答えた。しかし、もう鬼火ちゃんはライダーと無邪気そうに遊んでいるので僕の話など聞いてはいないだろう。
「どうしたんだい、炉黒君。そんなに感傷的な顔をして」
ふいに蜻蛉さんが言った。読心術とかじゃなく、本当に僕は表情に出してしまっていたのだろう。蜻蛉さんは真面目な時には読心術を使わない主義者らしい。
「うーん、ちょっと色々ね」
「そうはぐらかしたって俺には何となく分かるよ。さながら鬼火ちゃんやライダーとの別れの時のことを考えていたんだろ?」
「まぁ、そんなところだよ」
「今から別れのことを考えていても仕方がないさ。それに別れは付き物だって言うだろ? 炉黒君には少々酷なことかもしれないけどね」
炉黒君にとって、というのは僕が亡霊の彼女に恋をしていたことを指しているのだろう。その時は蜻蛉さんにも相当に世話になったのだ。
僕としてはあれから都市伝説、怪奇現象に対する偏見がなくなった。その偏見がなくなった分の数だけ出会いも増える、すなわち別れも増える訳だ。
・・・・・・こんなことを考えるなんてらしくないな。