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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(9~14節まで)

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 「どういう例えだ?比喩を用いて言ってみてくれ」
粛々整然という凛だったが、その表情は憤怒に曇っていた。
 「そうだなぁ。果実は未熟な方より、
熟れてるほうがいいって話しさー」
『あ、しまった』と、ヒューケインが思った頃には遅かった。
 「なん…だと…(ビキビキ)。
私が、旬を過ぎた熟女ババァだと言いたいのか?」
 「どういう結びつき!?違いますっ!被害妄想酷すぎでしょッ!」
 「うわぁ…卑猥な例えですぅ。エッチですぅー…」
『やだぁ、キモイ』という目線を投げつけるミミリ。
 「そう連想するミミリちゃんのほうが、よっぽど卑猥だよ!?」
汚名返上しようとして、ますます墓穴を掘るヒューケイン。
 「ほう。じゃあ聞くが、マイブラザー。
熟女と幼女だったらどっちが好きだ?」
 「お前…、ちょっとそれは例えが極端すぎないか…(汗)」
 「それなら仕方ない」と凛が独りごちた。
「ふむ。じゃぁ貴様はロリコンということでいいんだな、わかった。
明日の学園プランタリアタイムズの一面の見出しは決定だな。
『リミテッドテン:ヒューケイン・D・プラタナスは
ロリコンだった!?プランタリア一の伊達男(役立たず的な意味で)
に隠された性癖に迫る』よし、これでいこう」
うん、と頷く凛。

 「『これでいこう』。…じゃねぇよ!たまに
俺の変なゴシップ記事が学園新聞に載ってるのって
実はお前の仕業(リーク)だったんだな!?」
 「バカめ、今更気がついたか」
えっへんと大きな胸を張る凛。
 「どうだ。答える気になったか?」
 「絶対、罠に嵌める気だよなお前。やだ、絶対に答えねぇ」
意地でも答えないつもりのヒューケインだった。
 それを見て、凛は「ちっ」と舌打ちし、
携帯端末を取り出し電話をかけた。
 「もしもし。…新聞部か。あぁ、私だ。いいネタがあるんだが…」
 「うぉぉーーいっ!!わかった、わかったよ。答えればいいんだろっ」
ヒューケインは、慌てた様子で凛の端末を取り上げた。
 「ふん、このダークマターの残りカスめが。
素直に最初からそう言えばいいのだ」
 「ったく、お前がそうさせたんだろうがよ」
と言って、凛の端末を放り投げて返した。
 「では、聞かせてもらおう」
「いっとくけど、絶対に罠に嵌める気はないんだよな」
「くどいぞ。いいから答えろ」
「へいへい。まぁ、どっちかと言えばそりゃぁ〜、熟女のほうだな」
「なるほど。じゃぁ、年下の子と、ミミリ君ぐらいの子なら?」
「微妙な質問だな。まぁ、年下の子…かな」
 その一言を聞いて、二人はサァーと顔を青ざめさせて後ずさった。
「うわっ…やっぱり、ロリコンじゃないか」
「やっぱりロリですぅー(((TДT))))」
「うるせぇよ!どうあってもロリコンに仕立てあげる気だろ、テメェ!
全力で嵌める気まんまんじゃねぇかよ、この嘘つきッ」
 「悪い、すまない冗談だ。では、私と熟女だったらどっちが好きだ?」
「またかよ…。なんか質問に作為的な悪意を感じるんだが、さっきから」
「黙れ、答えろ、二択だ。さもなくば…」
凛は『新聞部にリークするぞ』と携帯端末をちらつかせた。
明白な脅迫だった。
そうされては、答えないわけには行かなかった。

 ヒューケインにとって、それはとても答えにくい質問だった。
――凛だと言えば、近親趣味のシスコンのレッテルを貼られ。
熟女だと答えれば、ロリコンの上に熟女趣味のレッテルを貼られる――
ここは、どっちつかずで曖昧に濁したほうが無難そうに思えた。
 「そりゃぁ、どちらとも言えねぇな。あえて明言は避けるぜ。
少なくとも、幼女趣味はねぇよ」
「二択だと言ったはずだがな?とうとう言葉も分からなくなったか、
この愚弟。略してゴミめ」
「全然略になってねぇし…。ったく、どうしろってんだよ…」
「素直に、言われたまま答えればいいんだ。
次に断れば、貴様の呼び名がゴミから『゛』になるぞ。
学園の名簿から住器登録まで、ちゃんと名義変更しといてやる。
ヒューケイン・D・プラタナスの名前を消して、『゛』と差し替えてやろう。
明日から、お前の名前は『゛』だ。役所や病院、店で呼び出される度に
『゛』様ー。『゛』さんー。と呼ばれるんだ。どうだ、嬉しいだろう。
きっと皆困惑した顔で、その名前の主を目で追って探すに違いない。
そしてお前は、顔を赤面させて素知らぬ振りを決め込むんだ。
誰だか一発でバレバレだな。
よかったな、より一層プランタリアでの知名度があがるぞ、
『゛』様(ニッコリ)」
最後を満面の笑顔で締めて言う凛。
 「シュールすぎるだろッ!そんなんで有名になりたくもねぇよ!
第一発音に困るしッ!」
「いちいち、ツッコミの細かい奴だ。黙って答えろこの『゛』が」
「あー、あー、わかったよ。言えばいいんだろ、言えばよぉー」
 ヒューケインは一瞬押し黙り、
「…その…お前だよ…凛」
少し気恥ずかしそうに言った。
 「な…!おまえ」
その突然の告白にも似た一言に凛は顔を赤らめ、
狼狽えの表情を見せた。
 (もしかして、これって…告白です?。
キャ━━━━(゚∀゚)━━━━!!禁断の愛ですぅっ!?)
ミミリは心のなか、一人で高まっていた。

 「…改めて言われると…やはり、困るな」
儚げな表情を浮かべ、独りごちる凛。
「凛…」
(ドキドキ)

 「やっぱり貴様は、私が熟女だと言いたいんだなぁぁーーーー!」
凛の体から怒りのオーラが迸った。
 「ちょッ!ちげぇ―――てッ!なんでそーなるよ!?」
「私=早熟ババァ少女=熟女=熟れた果実=私=熟女。
ということだろ、貴様の中ではッ!
人をそんな風に定義しておいてしらばっくれる気か、この『゛』ッ!」
「意味分かんないしッ!つか、いつまでそのネタ引張るのっ!?」
 凛は鼻息を荒くして、どこからか取り出した刀をスラリと抜いた。
「よし斬る。今すぐ殺す。よしマイブラザー、そこに直れ。楽にしてやろう」
凛の眼光が、鈍い光を放った。
 「ちょっ、悪質な誘導尋問でしょアレはーーー!
スゴイ理不尽ッ。いやぁ―――!」
 凛が刀を振り上げ、ヒューケインに斬りかかろうとしたその時。
そこにミミリがとてとてと割って入り、きょとんとして驚きの声をあげた。
 「えぇっ…!?凛さんって熟女だったんですかぁ〜?」
凛が刀を手放してズッコケた。
 ミミリは、体をウネウネとくねらせ、怯えた様子で言った。
「いやだぁー…ヒューケインさん…。ロリな上に熟女趣味で、
近親趣味なシスコンだなんてー…気持ち悪いですぅ――」
「おいっ…」
 結局、ヒューケインは全部のレッテルを貼られた。
明日からは『ロリで熟女趣味で、近親趣味のシスコン野郎』の
称号を持つ男と学園新聞に書かれ、皆からそう呼ばれることになるだろう。
 「それに凛さん。熟女なのに、無理して若作りするのはどうかと思いますよ」
グサッ。
凛のハートに言葉の矢がブスリと刺さった。
 「年甲斐もなくそんな大胆な水着きて、恥ずかしくないんですか?」
グサ、グサッ。
 「女性は歳相応の自然体で振舞うべきだって、お母様もいってました。
でも、凛さんって見た目若いし、全然行けてますよ。
そう気を落とさないでくださいね。