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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(9~14節まで)

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11.



幕間劇
〜intermedio〜

アナログとデジタルとミネラル120%

 ヒューケインはミミリがここまで来た経緯を説明してくれた。
「あの『便利家電』こと、ツツジ・C・ロードデンドロンに、
ビリビリっと気絶させられて
高速艇に担ぎ込まれて、ここまで運ばれてきたんだぜ。覚えてないのか?」
 思い出した。
あの時、喚いて散らしたあと、自分はツツジの電気ショックで気絶させられたのだ。
そう考えると結構長い時間、気を失っていたのかもしれない。
 凛がとなりのリクライニングチェアに腰を降ろして足を組んだ。
「高速艇には、私達も居合わせていたんだが、君はぐっすり寝ていたよ。
それこそ泥のようにね」
 「そうだったんですか。あの、道中何かトラブルとか…
なかったですか?」
「いや、とくに目立ったことは無かったぞ。
なにか、気にかかることでもあったのかな?」
「ああ…いえ。私、トラブルを招く…と言うよりは
引き寄せてしまう体質なもので。
私がいる所に限って、極稀な確率で発生するイレギュラーが頻発するんです。
それで、皆さんになにかご迷惑をかけてしまったのではないかと」
 それがミミリにとって一番気がかりな事だった。
自分がいるだけで稀な異常が、異様な確率で発生する。
自身のこの体質が、時に人を殺すことだってあり得るのだ。
それに他人を巻き込んでしまってはとても居たたまれない。
 「ミミリ君。それは自意識過剰というものだ」
「え?そ…そうでしょうか」
凛にキッパリと否定され、ミミリは目を白黒させた。
 「そうだ。意識し過ぎているが故に、
そう頻繁に起きているものだと君は錯覚し、強く思い込んでいる。
例え、それが事実だとしても気負いすぎて自分を責めすぎるのはよくないな」
 手に持ったコーラのスチールボトルを近場のテーブルに置いて
、ヒューケインが凛に続いた。
「お姉ちゃんの言うとおりだぜ、ミミリちゃん。
運命って奴は、なるように成る。そう言う風に出来ているんだ。
色んな人達が相互に関わり合い、事態が噛みあった結果、そうなった。
それを誰か一人のせいにすることなんて出来やしない。
思いつめるのは心に毒だぜ。偏り過ぎないよう、
”いい加減に”適度で適当が一番。それが人生を楽しく過ごすコツさ」

 凛はむっと顔をしかめ、抗議した。
「お前は悪い意味で、”いい加減で”適当すぎるがな。
公人たるリミテッドテンとしての資質を疑う限りだ」
「おいおい。そりゃないぜ、お姉さま。これでも規範的な
人間になろうと努力してるんだぜー」
その気もないような調子で、ヘラヘラと言うヒューケインだった。
 「ふふ…。あははは」
二人のやり取りに、ミミリは思わず笑い声を上げてしまった。
突然の笑い声に、凛とヒューケインは目をぱちくりさせた。
 『気負いすぎて、自分を攻めるな』『適度に適当』――
最もだな、と思った。
「お二人ともありがとうございます。
そう言ってもらえると、助かります」
「いや、なぁに」
「よせよ、照れるぜ」
この二人は、自分を受け入れてくれたような気がした。

 凛がふと目線をあげ、思い出すような仕草を見せた。
 「まぁ、そうだな。目立ったイレギュラーといえば、
そこのヤンキーが、寝ている君の体に
やらしい道具で悪さしようとしてたので、喝を入れてやった」
 「ッんがふッ!?」
 「ふぇ…ッ!?」
抑揚のない声で、淡々と言う凛だったが、
サラリととんでもない事を口走っていた。
 ミミリの全身に鳥肌が立った。
 第二次性徴真っ只中のミミリにとって、
男性が女性に抱く性的関心から来る感情は嫌悪すべきもの。
それを一言でいうなら、そう。シンプルに、『キモイ』。
 「えぇっ!?道具って…ひぇぇ…やだぁ。
えぇ…と、ヒュ…ヒューケインさんって、ロリコンなんですか?」
警戒心を顕にして怯えるミミリの目尻には涙が浮かんでいた。
 「違うって!つかなんでそう飛躍すんのッ!?ロリを匂わす要素がどこにあったよ!
つーか凛、誤解を招くようなこと言うんじゃねぇよ」
 ミミリは目の端に涙を浮かべ、リクライニングチェアの
上でガクガクと身を震わせた。
「ご…誤解?つまり、そ…それに相当することを…
やったと言う事…ですよね?…あわわわ」
「…おいおい、ミミリちゃん。地味に後ずさらないでくれ、
怖がらないでくれ、怯えないでくれ。
それに俺は断じてロリコンじゃない。その気はないから安心して欲しい」
真摯な態度で、宥め賺そうとするヒューケイン。
 「ほ…ほんとうですか?」
涙目になって、口をあわあわさせるミミリ。
 「あぁ、ほんとうだ」
警戒心を解こうと、ヒューケインは柔和な態度で応えた。
 「じゃぁ、私の女としての体に興味があって…!あぅあぅ」
 「ブフゥッ…!?あのねぇ、ちげぇーって…」
帰ってきた斜め上の答えに、ヒューケインはげんなりと項垂れた。
 否定をしようとも、ミミリの口上は止まらない。
 「未成熟な女性に性的興奮を覚える殿方も
いるってお母様も言っていました…」(((;Д;)))
「だから、興味ねぇって言ってるだろ。俺の女性趣向は至って健全だ」
 「え?ケモノ系とか、そっち方向に…ですか。
やだぁ、難易度高過ぎる上に、マニアックすぎですぅ」
『うわぁ』という顔をして、どん引きするミミリ。
 「あさって方向過ぎるだろ!
なんで、ケモラー(獣人好きな人のこと)扱いだよッ。
だから、俺はミミリちゃんぐらいの子にそんな気持ちは
微塵も抱かないって言ってるんだよ」

 「は…はぁ。じゃぁ、どういう女性が好きなんですか?」
ミミリは、目端に浮いた涙をぬぐい、話を最初に戻した。
 「そうだなー。例えて言うなら、凛のようなプ
ロポーションの良い大人の女性が好みだな」
そういうヒューケインの顔は、僅かにニヤケていた。
 (やっぱり気持ち悪いかも…)
若干引き気味のミミリだった。
 次の瞬間。背後から、なにやら憎悪めいたオーラを感じた。
「ヒューケイン、貴様…。遺伝子上の姉である私を
そんな性的な目で見ていたのか」
凛が全身から殺気を放っていた。
 ヒューケインはそれを見て顔を青ざめさせた。
「いや…、その違うって誤解だよ。
大人びた女性が好きだってことさ。
も…もちろん、お前も素敵だぜ、凛。…ハハハハ」
 凛は腕を組んで、顔をしかめた。
そして、何かに納得したような表情を浮かべた。
「そうか。そう言われて悪い気はしないが…。なんていうか気持ち悪い。
寒気がする。お前さ、死んでくれないか。
お湯をかけてインスタントに三分で死んでくれよ」
「褒めたのにヒデェ!カップ麺かよ俺はッ」
 凛はそれでもなお、怒りと軽蔑の眼差しをヒューケインに向け、
「それと今後、私の半径30km以内に近づくな。
貴様の△◯×を三枚におろして魚の餌にするぞ、
この畜生の近親ファッ◯ーめが。あぁー、それでは畜生に失礼だな。
近親趣味のお前など素粒子級のチリで十分だ。パッと消えて死ね。
ナノマイクロセコンドの領域で儚く消えて死ね。気持ち悪い」
 凛に、罵倒を浴びせられたヒューケインは頭をワシワシと掻き、
「さんざんないいようだな、ホントー。そう言うなよ、凛。
物の喩えだってー」