シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」
暁の負のオーラが取れ、優華の顔の色も元に戻ったところで安堂が話を切り出した。
「そーいえば話が全く変わるが、また噂のあの化け物が出たらしいな」
すぐにその話題に目を輝かせながら早苗が食いつく。彼女はこの手のゴシップみたいな話題が好きらしい。
「あ、それ最近噂になってるね。なんか一つ目の歪な人の形をした何かが夜な夜な街中を徘徊してるとかなんとか」
「そう、それ。どうも昨日俺のダチがバイト帰りに見たらしいんよ。その時は怖くなってすぐに逃げ出しちゃったらしいんだけどね」
「へぇ、何かの見間違いとかとは違うの?」
暁は安堂に単純な疑問を投げかける。
「暁の言うとおり俺もそれだとは思いたいんだけどねぇ。闇夜の中で輝く紫色の瞳がこっちを睨んできて怖かったとか凄い血の気の引いた顔で言ってきたもんでビックリだよ。今までそいつのそんな顔見たことなかったからちょっとね・・・・・・」
さっきとは打って変わって神妙な面持ちで語る安堂に暁と優華は不安になった。
「早苗ちゃんはさっき噂がどうとかって言ってたけどやっぱり結構目撃件数はあるの?」
何かしらの情報が得られないか優華は早苗に尋ねた。
「そうねー・・・・・・。やっぱり私に入ってくる噂にも同じようなの見たって話もあるし、結構多いと思うよ。それに警察もこの件に関してパトロール増やすなりして調査してるみたいだし」
「地味に大事になっちゃってるのね。これからしばらくはサークルの活動を早めに切り上げて帰るのがベストかも」
「俺もそう思う。噂にしてもこんなに大事になっていく、ってのは怖いしなぁ。それに何かあってからじゃ遅いだろうしね」
怖いもの知らずの安堂にしては珍しい事を言うなと暁は思った。しかし、心配する気持ちも分からなくはない。
「そうだな。俺も早く帰るようにするよ。ただ、今日はレポートとか色々とやりたいことあるから帰るのが遅くなるのは避けられなさそうなんだよね」
「暁、そのレポートって家じゃできないの?」
「ちょっと厳しいかな。学外に持ち出せない資料もあるからここでしかやれないんだよ。もし何かあったらこんな面倒くさい課題を出したあの糞ジジイの教授を恨んでやるよ」
心配そうに優華が見つめてくるが大丈夫だと笑顔で暁は返した。
「ホントに気をつけてね」
優華の心配そうな一言が心に突き刺さるのを感じた。
作品名:シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」 作家名:ますら・お