シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」
[2]
暁は眼を開いた。
眼前に広がるのはいつもの俺の部屋。机に本棚、その他色々な生活雑貨が置いてある。そして暁は宇宙空間ではなくてベットの上にいた。
耳を傾ければ鳥のさえずり、下の階から微かにまな板を叩く音も聞こえる。胸に手を当てると心臓がかなり早いスピードだが鼓動を続けていた。
俺は生きているんだという確証も得られて一安心というところだ。
「はぁ、しかし夢ってこんな生々しいものだったっけ?」
頭をかきながら呟く。
夢にしては感覚がはっきりしすぎていて気持ち悪いのが怖い。独特な雰囲気の少女に頬を触れられたのはちょっと嬉しかったが、その後の怖い騎士様の天から地への落とし方は酷すぎると思う。
もし、あのままだとアイアンクローでも喰らって頭がグシャっとなっていたのだろう。あれが夢オチで済んで良かったと暁はホッとする。
「顔でも洗って悪夢を流してくるか」
ベットから立ち上がり、部屋を出て階段を下りていく。
「おはよう。暁」
リビングには朝食の準備をしている母がいた。食卓にはすでにご飯と味噌汁、焼き鮭が用意されている。
「おはよう母さん」
「おはよっ、あら凄い汗かいてるじゃない。なんか悪い夢でも見た?」
母に言われて寝巻きを見ると首やら色んな箇所が汗で変色している。
「まぁ、その通りだね。」
「シャワーでも浴びてきなさいよ。それで外に出たら優華ちゃんにも嫌われちゃうじゃない」
「はいはい、分かってますって」
優華、フルネームは青葉優華(あおばゆうか)だ。暁と同じ大学に通っている幼馴染で暁の家の隣に暮らしている。両親が単身赴任で別々の所で働いている事もあり自宅で一人暮らしをしている。大変そうではあるが、当の本人は家事とかを笑顔で楽しそうにこなしている。それに何かあったときは、暁の両親が面倒を見ることになっているのでバックアップの方もしっかりとしているので心配はないのだろう。
その後顔を洗い、暁は起きてきた父、母の三人で朝飯を済ませるとシャワーを浴びて服を着替えた。
「じゃ、行ってくるわ!!」
作品名:シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」 作家名:ますら・お