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ますら・お
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novelistID. 17790
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シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」

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第一章「日常からの剥離」



[1]


『起きなさい、火坊 暁(ひもりあきら)』


自分の名前を呼ぶのは冷たい少女の声。
求めに応じて暁は目を開ける。そこに広がるのは家の天井でもなく、よく夢であるようなだだっ広い青空の広がる草原でもない。あるのは黒い空間に星の様な瞬きをする光を散りばめた宇宙空間のような光景だった。
これは夢なのかと考えるが、様々な感覚がはっきりしているために違和感を覚える。普通の夢ならばもう少しぼやけたもののような気もしなくもないがとも思う。
そう考えながら辺りを見渡すと声の主を視界に捉える。
自分から少し離れたところに白い外套を纏い、フードを目深に被った人間がいるのが分かる。外套のせいで身体的特徴を判断できないが、フードからこぼれ出た黒い微かに赤みがかかった長い髪、小さい身長、やはり少女か。
「お前は誰だ?」
俺の問いかけに少女は何も答えない。
『ようやく見つけた。ローゼに相応しい人間を』
そう呟くとこちらにゆっくりと近づいてくる。
「おい、質問に答えてくれないか?それにローゼに相応しいって・・・・・・」
その少女は暁の直ぐ傍にまで近寄ると暁の顔に手を伸ばし、暁の肌に白いほっそりとした手が触れる。暁は後ろに身体を下がらせようとするがそれが出来ない。冷たい感触が頬に伝わってくるのが分かる。
少女にこういう風に接近されるのも悪くないなとも考えるが、ふと幼馴染の顔が浮かび考えを改める。
少し間を置き、手を離してくれないかと伝えようとしたときに少女に異変が起こる。少女特有のか細い輪郭がぼやけたと思った矢先、淡い光を放ち少女は消えた。
そして、現れたのは一人の騎士だ。
それは装飾の施された黒色の西洋の鎧のようなものを纏い、兜の下には仮面のようなものを被っていた。
騎士は青白く光る眼をこちらに向けて見つめてくる。その眼差しは非常に鋭く、こちらの心臓を今すぐにでも抉り取ることもできそうだ。殺意とも取れるような視線に暁は震えた。
黒色の鎧に覆われた右手を暁に向けると騎士は近づいていった。そのまま顔を掴もうとしてくる。
暁は逃げようとするものの身体の自由が利かない。
騎士の手は非常に大きく暁の顔など簡単に握りつぶしてしまいそうだ。殺されるのか俺は、と考え暁は恐怖する。
大きな手が暁の顔を覆う。そこで暁の意識は途切れた。