小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ますら・お
ますら・お
novelistID. 17790
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」

INDEX|17ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

第三章「アリオンと人類」


[1]
次の日の朝になると暁は優華の家を訪ねた。
あの後は何も問題もなく一日を終えることが出来たとのことで暁はほっと胸を撫で下ろしている。
今日のミラは昨日までの厳つい外套姿ではなく、セーターにデニムという至ってシンプルな服装をしている。優華がさすがにあのままでは色々と問題が生じるという事で自分の物を着せたらしい。玄関で待っていた私服姿のミラを見て、暁は外套では分からなかったミラの可愛らしさみたいなものを感じ、見つめてしまったが優華に睨まれて肝を冷やす思いをしている。
そして今はリビングでミラから優華と二人で色々と話を聞いているところだ。
今はテーブルを挟んでミラと向き合う暁と優華の二人、という構図になっている。テーブルにはコーヒーの入ったカップがそれぞれ三人分用意されていた。
まずミラがカップを取り、口をつける。一瞬むっとした顔になるが止めることなくそのまま飲んでいく。カップから口を離すとふうと一息つき、口を開いた。
「アリオン、遥か昔に彼らは貴方達の祖先である私の属していた陣営と互いの種の存亡を賭け戦っていたわ。彼らはどこからともなく現われ、私達に攻撃を加えてきたの」
指でカップの口をなぞる様に動かしながらミラは会話を続けていく。
「戦いは長くとても辛いものだったと聞いてる、だけど私が生み出されたのは戦争が終わってからだから細かい状況のことはよく分からないけどね。そして戦争が始まると圧倒的な力と数で押してくるアリオンに私達は次第に追い詰められていったわ。だけど、その中で不利な状況を打開できるかもしれない兵器が生み出された」
「それがドールってことか」
暁の言葉にミラはゆっくり頷く。
「ええ、単体で圧倒的な戦闘力を誇り、怒涛のように押し寄せるアリオンにも屈しない兵器、それがドールよ。私はローゼと名づけられたドールの管理を任されるために生み出された管理者みたいなものなの」
ミラは右腕を突き出すと肘の辺りまで袖を捲くり始めた。服が捲くられ、透き通る程に白い皮膚が露になるがその皮膚の上に黒い紋様のようなものが刻まれている事に気づく。
「これがその証よ」
複雑な黒い線が蛇のように幾多にも絡み合い複雑な絵を生み出している。刺青のようなこの紋様は彼女がローゼの管理者である証ということか。
「ただ、私は他の管理者とは違って、戦後に生み出されたかなり珍しいタイプらしいの。ローゼも私と同じで、戦争の後に残された設備と技術、人員全てを用いて造られているの」
「へえ、やっぱりそれなりの数が作られたってことか?」
浮かんだ疑問を口にする暁、それに勿論よ、と袖を戻しながらミラは応える。
「記録では1000体程のドールが造られている筈。戦線に投入され、その圧倒的な力で多くのアリオンを葬り去ったわ。だけど、戦争が進むに連れてドールに対する被害も目立つようになってきた。それだけアリオンが馬鹿じゃなかったってこと、彼らは彼らなりに対策を練って狡猾に立ち回ってきたわ」
指と指を合わせる形でミラは自分の前で手を組む。
「そして戦況が膠着してくる頃、余裕の無くなってきた私達は彼らを一網打尽にできる一つの作戦を立てたわ。それは彼らの親玉であるクイーンを捕らえて、それを餌に可能な限りのアリオンを誘き出し、次元の狭間へと吹き飛ばすというものよ」
餌を用いて敵を釣るのは作戦の常套手段ではあるが、その餌が敵の親玉であるということはかなり大きな危険が付きまとう筈だ。餌の確保の時点でリスクがあまりにも大きい上に、確保できても餌への食いつきは非常に強く、逆に引くための竿が折れてしまうのではないのか。
「確かに作戦としては悪くないが、それだと余りにも危険だったんじゃないのか?」
「承知の上よ、私達にはもうこの手段しか残されていなかったの、局地的にアリオンを殲滅できる程の大規模な戦力もない、そんな私達に残された最後の希望なの」
「そうか……。結果はどうなった?」
「最終的に多くのドールと人員を失ったものの“戦争には”勝ったわ。なんとかクイーンを捕らえて、用意した空中要塞に縛り付け、アリオンをおびき寄せ、そして集まってきたところを次元の狭間に吹き飛ばすことに成功したの。だけど……」
「だけど?」
「さっきも言ったけど彼らも馬鹿じゃなかった。地上には消え去った彼らの“置き土産”があったのよ。分かりやすくいうと強力な爆弾ね、ざっとこの星の8割を焼き尽くせるようなものが」
非常に恐ろしい事をさらっとこの少女は言うな、と暁は感じた。