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ますら・お
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novelistID. 17790
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シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」

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[3]
街に再び夜が訪れる。
人通りの少ない海岸沿いの道、辺りは不気味な静寂に包まれていた。
そこを歩く人影が一つ。
優華だ。
「うぅ……バイト終わるのが思ったより遅くなっちゃったなぁ」
周りを不安そうにキョロキョロと見渡しながら早足で進んでいく。昨日の噂話に加えて、朝に新聞で見た爆発事件の事を思い出すと心に不安が重くのしかかる。
ああなんかトラブルに巻き込まれたら嫌だとか思いつつも歩みを進めた。
そのままある程度進み、住宅街へと入った所だった。
優華は角を曲がろうとする。
「きゃっ!?」
突然目の前に影が飛び出してくる。早足だったせいで優華はスピードを緩められずにそのまま激突してしまった。バランスを崩し、そのまま大きく尻餅をつく。
「だ、大丈夫ですか?」
頭の上からかかるのはいつも聞いている声だ。優華はまさかと思いつつ顔を上げる。
そこにいるのは予想通り、暁だった。
「え!?暁じゃない」
「急に飛び出してきてビックリだよ。ほら、立って」
手を差し出す暁、優華は手を握ると立ち上がった。パンパンとお尻の辺りの砂を払うとふうと一息つく。
「あれ?暁はこんな時間になんでこんな所ウロついているの?」
「ああー……アレだ、優華の帰りが遅いのが気になったんだ。ほら、最近色々と物騒だしね。まあ、何かあったら俺が守ってやるよ」
それらしく言ってみたものの、暁の目的は別にあった。
喫茶店を出た後、色々とあの少女を探し回ったがどこにもいないので途方に暮れていたところで優華と出会ったのだ。
「やっぱり暁は頼もしいね」
笑顔で返してくれたのが暁には嬉しかった。
「ここにいてもアレだし、そろそろ帰るか」
「そうね、行こう」
二人は並んで楽しく談笑をしながら歩き出す。
そのまま進み、例の公園の近くに通りかかった時の事だった。
まず、異変に気づいたのは優華だ。
「ね、ねぇ。何かにつけられてる気がしない?」
周りを見渡す暁、しかし視界の中で動くものは何も無い。優華が不安そうに暁にくっついてくる。暁も違和感は薄々感じていた。
「急ごう。嫌な予感がする」
最初、二人は早足だったが、駆け足から猛ダッシュへと変わっていく。それにつれて違和感は確信へ、そしてついに目の前にその姿を現した。
二人の進行方向を塞ぐようにそいつは飛び出してくる。
街灯に照らされるのは石像のような人型の化け物、間違いなく昨夜のやつだ。暁は敵を睨みつけながら優華を庇う様に後ろに下がらせる。
「逃げるぞ!」
二人は元来た方向へと再び走り出す。化け物はすかさずその後ろを追いかける。
速さでは化け物の方が上の様で次第に距離を詰められていく。
「嫌っ!!来ないでっ!!」
悲鳴のような声を上げながら優華は走った。角を曲がるとそこにはまた同じような奴らが複数立っている。
昨夜と同じだと暁は感じた。こいつらは獲物を上手く追い込んで、逃げられなくなったところで一気に仕留めるつもりなのだろう。
このまま包囲されては昨日と同じだと考える。加えて、優華は暁ほど体力があるわけではない、走り続けていてはすぐに限界が来るだろう。
今は目尻に涙を浮かべながら必死に走っているが、予想通り体力の限界が近いようだ。
暁は必死に考える。しかし、この生身のままでは奴らにとても太刀打ちできるようには思えない。そうしている内に二人を追う化け物たちの数は増えていく。
有効な打開策を編み出せずに二人はただ走り続ける。
気づけば住宅街を抜け、閉鎖された工場の跡地へと二人は踏みこんでいた。
ここでは誰に対しても助けも求められない上に、工場の周りを囲めば二人は逃げられないという奴らにとっては好条件な場所だ。
立ち止まり、周りを見渡すと昨夜よりも多くの化け物に取り囲まれているのが分かる。
「も、もう無理……」
優華の体力も限界のようで辛そうに息をしている。
「どうすれば……」
自分の体力も優華と同じく限界に達していた。
化け物たちはその様子を見ると、包囲網を形成しつつ距離を詰めていく。
「ここまでか……」
暁は自分の死を覚悟する。
優華は暁にしがみつき、嵐が過ぎ去るのをただ祈った。
もうここまでかと思ったその時だ。


「決心はついた?」


冷たい空気に響くのは冷たい少女の声。
化け物たちは何事かと周りを見渡す。声の主を探す化け物たちの内の一匹が空から降ってきた影に潰される。
影は化け物を踏み台にして飛び上がった。それは空高く舞い上がり、月光に照らされる。空を舞うものの正体は、赤みがかかった黒い髪に透き通りそうなほど白い肌を持つ美しい少女、ミラだ。
二人の目の前にすとんと着地する。
「優華、俺はさっきお前を守るっていったよな」
「う、うん」
「その約束を守ってみせる」
暁の言葉に呼応するとミラは右手を差し出し、暁は力強くその手を握った。
『マスター確認。ローゼ、召喚!』
暁とミラは強烈な光に包まれた。
あまりの閃光に優華は両腕で顔を覆い目を閉じるが、瞼を貫通して光が入ってくる。
「な、何?」
すぐに強烈な光が収まった。優華はゆっくりと目を開ける。
目の前に立っているのは暁と少女の二人ではなく、巨大な黒い騎士だ。その身長は2mを越えているのではないのだろうかと思う。右手には1m以上は軽くはあるかのような長身の剣が握られている。
『優華』
騎士が喋った。その声は暁の声そのものである。
「あ、暁なの!?」
『そうだ。危ないから下がっててくれ』
剣を構える騎士。
『行くぞ!!』