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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 一目見て丸山花世は嫌な顔を作った。不快な印象。傲慢な人物。友達にしたくない相手。第一印象はきわめて大事。そして、芝崎も松木もひどく勘に触る嫌な電波を発しているのだ。
 「……」
 小娘がさりげなく視線を送ると……姉もなんともいえないじっとりとした表情になっている。それでも。
 「大井です」
 大井弘子は営業用の笑顔で言った。
 「こちらは妹の丸山花世です」
 芝崎という男は、自己紹介に、ふんというような態度を取った。そして、そのような態度は大井弘子だけではなく、むしろ市原に対してのものであるように小娘には感ぜられる。
 ――てめーの言うことなんか聞かねーんだよ!
 芝崎の態度はそのような尊大なものであり、それは、松木も同じであった。
 「芝崎次郎です」
 なまっちろい眼鏡は見下したようにして名刺を取り出し、松木もそれにならう。松木という男はどうも芝崎には従うが、市原には従わないと、そういうことのようである。
 「プロデューサーさん、ですか……」
 大井弘子はちょっと首をかしげるようなそぶりを見せて、貰った名刺を眺める。
 「エグゼクティブ・プロデューサーとプロデューサーはどう違うのですか?」
 大井弘子の問いかけに、市原は言った。
 「いや、それは、全体を統括するのがボクということで……」
 「屋上屋になってしまいませんか?」
 「そういうことは……」
 芝崎は大井弘子のことをにらむように見ている。目が悪いというわけではないだろう。嫌な視線であり、悪意に満ちた眼差しである。松木も同じ。どうも二人は大井弘子に対しても丸山花世に対しても良い感情は抱いていない……恨まれるようなことを果たしてしたか。丸山花世はスネに傷がありすぎるので、芝崎、松木のことは思い出せない。
 「いずれにせよ、市原さんは芝崎さんよりも立場が上、ということですね?」
 「まあ……そうです」
 市原は自信なさそうに言った。芝崎も松木も何も言わない。
 妹は姉の言いたいことを察している。
 ――プロデューサーにしろ、ディレクターにしろ、会社での立場が下なんだから、上司を待たせたりするのはおかしいよなー。お茶くむの、普通、ディレクターの松木だろ。