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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 隆々として続く会社であれば作品の魂が逃げ出したいと思うだろうか? そんなことはないはず。船が沈みかけているからこそ作品も逃げたがっているのではないのか。 
 「ちょっと調べてみる必要があるわね」
 大井弘子は言った。
 もしも……もしも、大井弘子の勘が間違っているのであればエターも16CCも続く。これからも平穏に、幸福に。けれどありすたちキャラの叫びと、エターという作品の意思が正しいのであれば、16CCという会社は……。
 「花世、ちょっと手伝って」
 
 数時間の後。
 大井弘子の行動は電光石火の如く。
 情報通の同業者に連絡して16CCの近辺を洗ってもらうとと同時に、その上の親会社NRTの資産内容その他をチェック。
 丸山花世もシナリオ作業はいったん中止して姉の補助に回る。イツキの近くにあるマンガ喫茶でNRTの財務諸表をダウンロードして印刷。それを店に持ち帰ってチェック。さらに偶然やってきたなじみの公認会計士と首をつき合わせて決算書や投資家向けのIR情報を調べてあげる。
 そして……。
 「市原のタコが言ってた二ヶ月連続がどうとかって……このことかー!」
 テーブル席で小娘は叫んだ。プリントアウトしてきた諸表にはこうあったのだ。
 ――当社子会社16CCは二期連続の赤字……。
 赤字。赤字なのだ。さらには、
 ――当NRTグループでは、三期連続の赤字をもって子会社の整理清算を行う。
 つまり、それは……。
 「ええと……今年アカだったら、16CCなくなっちまうんじゃんか!」
 「そうね……」
 大井弘子も顔色が悪い。
 「市原の野郎、なんで、こういう大事なことを隠しやがるんだ!」
 優柔不断のふりをして事実は隠蔽。部下同士を争わせて自分の保身を図る。たいした悪党ではないか!
 偶然店にやってきたお客の公認会計士が説明してくれる。 
 「NRTという会社の決算は三月……。それまでに、黒字に持っていければ整理はないみたいですけれど、どうなんですかね……」
 はげてちょび髭、もう六十を過ぎた会計士は、見てくれは冴えないが相当の切れ者である。