むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4
「覚えておいて。花世。私もそうだし、あなたも、キャラの名前を変えたのは芝崎さんだと思っている……妨害しているのは芝崎さん。でも多分そうじゃない」
「?」
「そうではなくて……妨害しているのはキャラよ」
「え?」
小娘は足を止めた。
「ありす。名前が変わった。何故? 芝崎さんが無理に変えた……そう見ることもできる。でもそうじゃない。WCAの人間であれば、こういう見方をするの。つまり、名前が変わったのは『ありす』というキャラが拒んでいるから」
「……」
「……16CCの作品に出たくない。そこに行けば悪いことが必ず起こる。だから、キャラが作り手の足を引っ張る」
「そんなこと……あんのかな?」
小娘は首をかしげた。納得がいかなかったからではない。そういうことがあるのを認めることが怖かったのだ。
「キャラは……誠実に作者が向き合ったキャラは時に、びっくりするようなことを作り手に教えてくれる。そういうものよ、花世」
大井弘子は長い経験で知っているのだ。そういうことがあることを。そして小娘も、なんとなく理解している。そういうことが……ありえると言うことを。
「うーん……」
「作り手を選ぶのは作品の側。作品こそが作り手を選ぶ……そうでしょう?」
「うん。まあ、そうだけど……」
「カリオストロの城はルパンが宮崎監督を選んだの」
「……」
「エターは私達を選んだ。でも……それは必ずしも、作品を完成させて欲しいという、そういうことではないのかも……」
「って言うと……」
「つまり……」
小さな同人ゲーム。
タイニー・エター。
小娘ははたと気がついた。
「もう……本家はダメだから、分家に作品の魂を全部移しかえる……」
三神も言っていた。ダウンサイジングをしてもいいから作品を生かしたい。そこしかエターという作品が生き延びる道はない。エターという作品もあるいは分かっているのか。
――このままでは干からびてしまう。
遺伝子を何としても遺す。遺したい。そのために……小娘たちは呼ばれた。
「うーん……」
丸山花世はうなった。
「あれ、ってことは……やっぱり、16CCっていう会社は……」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4 作家名:黄支亮