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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 一人では大井弘子には太刀打ちできない。だから越田や間を現場に引っ張り出して会議で大井弘子と噛み合わせた。そして愚かにも越田や間はそれに乗っかってしまった。もちろん越田たちには自分の力を誇示したいという思いがあったのだろう。そして全員が大井弘子の正論に粉砕されることになった。
 「市原さんもそうですが、皆さんはどうもよく理解されていないようです。私達は16CCに雇用されているのであって、皆さんに雇われているわけではない。で、あれば、現場スタッフの個人的な利得よりも会社の利益を優先するのです。これは当然のことです。皆さんがおかしなことをしているのであれば、当然、これに異見をしなければならない。それは私達の責務でもあるのです。ですから『関係ない』では済まないのです」
 大井弘子は低い声で言った。
 「とにかく、作品のことは今は、ひとまず置きます。それよりも先に、みなさんはやるべきことがある。まずは、私達に本当に何をさせたいのか……仕事をさせたいのか、それとも、自分達の野心の手助けをさせたいのか、あるいは親会社や提携先に打撃を与えたいのか。みなさん、まずはそれをきちんと話し合って決めてください。私達を呼ぶのは、みなさんの間に統一した見解が生まれてからです」
 大井弘子は席を蹴って立ち上がった。丸山花世は何も言わなくて済んだが、大いに溜飲を下げている。
 ――その通りだ。
 キンダーの社員は愚かしいのか、それとも、腹黒いのか。どちらにせよまともではない。一緒に仕事をしていくのに不都合なほど狂っている。
 「市原さん、あなたの責任ですよ。あなたが話をまとめて、私のところに連絡をください」
 「ええと……まとめるとは何を?」
 市原はやはりコカインで頭がいかれているのか。丸山花世が怒りを通り越して呆れている。
 「あんたねー……狂ってるんじゃないの?」
 せっかくの大井弘子の指摘もまったく無意味。うつ病では仕方がないか。
 「このまま、作品を作る意味があるのか。てめーらの中でよく考えろっつーの。エターの新作、そんなもの作るだけの価値があんのか」
 「え、ええと、それは、もう会社的に作るということで決定していまして」
 どこまでも血の巡りが悪い四十男。大井弘子は言った。
 「それはあなたの意見でしょう。市原さん。みなさんの意見ではない」