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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 「いいえ。あるのです。あるのですよ、間正三郎さん。心をひとつにしない会社は成功しないのです。そして御社の置かれている状況を鑑みたとき、ヒットではダメなのです。ホームランでないと失地は回復できない。一度切れてしまった物語との絆は、生半なことでは戻ってこないのです。それこそ誰かが倒れて亡くなるぐらいでないといけない。けれど、今の皆さんはそうなっていない。今の皆さんは上は上で下の力を殺ごうと画策し、下は下で険悪に上の地位を狙って策動している。同僚を疑い、誉めそやすふりをして実は相手を下に観ている。みなさんは内部でまとまっていない」
 「……」
 間正三郎はぶんむくれて貧乏ゆすりをし、越田は眉間にしわを寄せて沈黙している。そして全ての首謀者である芝崎は唇を震わせている。市原は何も言わずにうつむくばかり。
 彼らが怒るのは、大井弘子の指摘が正しいからである。
 一ミリの間違いも無い事実であるから。反論のしようもなく、また、彼らの拗けた心のうちが白日の下にさらけ出されているかに。まったく身動きができない。もしも、大井弘子の考えに狂ったところがあるのであれば、彼らはこう言うはずである。
 ――それは違いまする
 その一言で済むはず。だが、そうしない。
 それはやはり彼らの心に、悪を成そうという暗い動機があったればこそ。下を争わせて自分の発言権を増そうとするシャブ中エグゼクティブ・プロデューサー。それにとってかわろうとするプロデューサー。実力の無いエグゼクティブ・プロデューサーも、さらにはプロデューサーも両方をそろって侮っている原画。原画は、グラフィッカーのことも心の中では下に見ている。グラフィッカーは尊大な態度を取っているが実は心はガラスのよう。
 全員がもろく、全員が弱い。
 そして大井弘子は自分の弱さにも暗さにも立ち向かう気が狂ったような勇敢さを持ち合わせている。それは丸山花世も同じ。
 たった一人で作品の神様と向き合って戦い続ける人間と、会社に守られた人間。鍛え上げられた歴戦の古兵と敗残兵。とても一対一では勝ち味などない。
 だからこそ芝崎は仲間を扇動したのだ。