むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4
入札で買い取られたエターの魂は、放置された時期に変わったのだ。さらに、そこに雑菌としての大井弘子や丸山花世とふれることで、以前のものとは相当違う作品になっている。
――いつまでも、以前と同じままに。
スタッフはそう考えている。けれど、作品はそう思っていない。
――もう、前のままではいられない。
「作品は……すでに以前のそれとは違っています。もう、今のエターは皆さんが知っているエターではないのです」
大井弘子の言葉に賛同するものはいなかった。
と、いうか、賛同以前に大井弘子の言っている意味を理解できたものがいなかったのだ。唯一妹を除いては。結局は、その程度のスタッフ。その程度の伸び代しかない人々。
「みなさんは私達よりも自分達のほうが上であるとお考えのようです。それはまったくその通りです。けれど、まったく見当違いなことでもあるのです。いまだにキンダーガーデンが続いていて、これがキンダーの案件であるならば、私もみなさんの意見に従うと思います。しかし、みなさんはキンダーの社員ではありません。キンダーは無くなった。つぶれたのです。つぶれた会社の人間が新たに始めるエターなのです。だとすれば、皆さんの経験や知見といったものは役に立ちません。みなさんは自分を誇れるほど偉くはないのです。プロデューサーなどというのは僭称です。僭越な称号なのです。芝崎さんは、それこそ雑巾がけから始める気持ちでないといけません」
大井弘子の言葉には澱みがない。一方、なまっちろい豚野郎は顔色を失って、ただでさえ不健康に白い顔が青紫に変色している!
「むしろ私と花世がブランでもエターを手がけていることを鑑みれば、作品世界に今の時点で一番深くコミットしているのは私であり妹です。みなさんではない。みなさんはみなさんが私達よりも上にあると考えているようですが、それは間違いです。私達は皆さんと対等です」
「ですからこそ、苦言として申し上げています。このままではこのプロジェクトは危ない。昔のまま、昔のままでやっていけるほど情勢は甘くはありません。はっきり申し上げましょう。破滅したやり方を今回も取るのであれば、また破滅するのです。キンダーはつぶれましたが、同じように16CCもつぶれる。利益を出せないやり方、利益を出せない作品なのですから、それは当然のことなのです」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4 作家名:黄支亮