むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4
態度の悪い間がしゃしゃり出てきた。
――パクリヤロー。
小娘はちんちくりん色黒をにらみつけている。
「前作は前作です。そんなものはどうでもよろしい」
大井弘子は切って捨てた。
「そんなものは……どうでもよいのです。思い出は助けに来てくれませんから」
「けれど、エターには歴史があるわけで、ファンもついていきている。いまさら変えるわけには……」
越田が言った。
越田のほうが間よりは話が多少分かるのか。いや、同じであるか。
「残念ですが、歴史もファンも意味がありません。エターには現状それだけの力はないのです」
大井弘子はあっさりと言った。
「エターという作品にはもう神通力はないです。それだけのパワーも人を引き込む魅力もありません」
「いや、そんなことは……」
市原は言ったが、大井弘子は聞いていない。どうせ市原は何も言ってないのと同じであるのだ。
「で、あればこそキンダーガーデンは潰れたのです」
大井弘子の言葉は静かなものであったが、同時に雷鳴のようにして響いた。
「みなさんの会社はつぶれたのです。キンダーガーデンという会社は自己破産しました。なくなったのです。そして、権利はブランが買い取った」
男達の表情はこわばっている。
「みなさんは作品をよそにさらわれたと勘違いされているようですけれど、それは違います。みなさんは作品を守りきれなかった。守りきれなかったのです。いまさらに、オレのエターと喚かれてもそれはスジが違います。そういうことを言う権利はみなさんにはもはやないのです」
「……」
「みなさんはキンダーガーデンがつぶれて、それでこちらに移って来たわけで……作業もすぐに引き継いだのでしょう。ですから、権利が買われた際に作品そのものの質が相当に変質してしまったことに気がついておられないのだと思います」
人が変わるようにして作品もまた変わっていく。
それは一晩放置された生鮮食品が、元に戻らないのと同じ。ただ作品の魂は必ずしも劣化するとは限らない。熟成する場合もあるし、化学反応を起こして別物になる場合もある。
大井弘子も、丸山花世も感覚として分かっているのだ。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4 作家名:黄支亮