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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 そして……当たり前のことであるが、スタッフの中にそこまで深い亀裂が生じた場合、作品は立ち行かなくなるのだ。
 「市原さん、これはどういうことですか?」
 大井弘子は低い声で言った。
 「えーと……その、ですね。ボクも、混乱するからなるべく早く決めるようにと現場には言ったのですが……」
 「今から名前を戻してください」
 大井弘子は言った。
 「名前を戻してください」
 男達は沈黙した。
 「それで話が済むことですし。戻してください」
 「えーと……それはできないです」
 市原は言った。
 「なんで?」
 丸山花世は詰問した。
 「それは……その、社内報とかに名前をすでに書いて、刷ってしまったので……変更がきかないって言うか……」
 「何ーっ!」
 丸山花世は激発しかかり、姉がそれを抑えていった。
 「つまり、御社では社内報が製作中の作品に勝るわけですね?」
 「社内報だけじゃなくて、テレカのイラストにも名前を書いてしまったので……」
 「それは、要するに、本作よりもテレカやグッズのほうが優先されるとそういうことですか?」
 「いや、その……」
 シャブ中市原はぼそぼそと言った。
 「だいたい名前が古臭いって、てめーどういう意味だっ!」
 小娘は怒っている。
 「……そ、その」
 市原は芝崎や越田、間の表情をうかがっている。
 「現場の意見として、そうなったっていうか……いや、ボクも古いってそう思いましたし、昭和の香りっていうか……」
 市原は本心では小娘にやり込められて面白くないのだろう。いやらしい反抗心を言葉の端々に覗かせている。それが小娘には腹立たしい。
 「なんだとこの野郎! 麗音なんて名前の奴、どこにいるってんだ! てめーの家族にいんのか? ああッ?パクリは気にいらねーとか言って、てめーは声優の名前丸パクリじゃねーか! 常識考えろよ、このタコ!」
 小娘の激発に間正三郎が口を歪めている。両足を投げ出し、腕を組んでふんぞり返ったちんちくりんは罵声がいたく気に入らないらしい。
 「花世……」
 大井弘子が言った。