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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 丸山花世は顔を真っ赤にして言った。
 小娘が自分が馬鹿にされたから腹を立てているのではないのだ。作品と言うものは生まれようとして生まれてくるもの。名前を与えられ、キャラが踊りだす。そのキャラの踊りは作り手もとめることが出来ないしとめてはいけない。
 止められるとすれば……それは、その程度のキャラでしかない。
 「花世……」
 大井弘子は妹を制した。
 怒りに我を忘れた小娘と違い、姉は分かっているのだ。
 ――ここまでなったからこそ、今、こういう理不尽な嫌がらせをしてきている。
 その嫌がらせの黒幕は間違いなく芝崎次郎。
 性格の悪いなまっちろい豚野郎。
 芝崎が何故そういうことをしたのか、姉は理解している。彼は、自分か作品を統括するべきだと考えているのだ。自分の作品る自分のテリトリー。エターは自分のもの。私物。自分の思い出であり、三十年ちょっとの自分の人生のうち三分の一を共にしてきた作品。だが、丸山花世も大井弘子もそのような芝崎の縄張り意識には頓着しない。なぜならば、二人には作品のスジというものが読めているから。
 ブランでもタイニーの仕事を請け、16CCでも仕事を請ける。
 それはつまり作品から選ばれたということ。
 人が選んだのではない。天が選んだこと。芝崎はそういう感覚が分からない。自分が作品と向き合っていないから。結局は芝崎という男は美術館の管理人程度の能力しかないのだ。だが、プライドだけは一流。まるで一流の芸術家気取り
 ――オレのエターで勝手にはさせん。オレのエター! オレ様のエターなんだ!
 さらに、名前の変更にあくまでこだわり、全てを書き換えるように芝崎が画策したのは、彼自身が、丸山花世の小さななぞなぞを解けなかったと言う悔しさ。
 ――謎が解けなかった! 小娘が作った謎を解けなかった!
 理解できなかったという事実は拗けた芝崎の頭ではこう変換される。
 ――こいつら、オレを馬鹿にするために、からかってきてやがるんだ!
 かくして、芝崎は大井弘子と丸山花世に仲間を抱きこんでのサボタージュという方法で嫌がらせをしてきた。間であるとか越田はそれに乗った。おそらくは、二人が芝崎に乗ったのは市原に対する憎しみや、丸山花世の後ろにいるだろうブランに対する反抗心からであろう。
 それが真実。