小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

INDEX|31ページ/50ページ|

次のページ前のページ
 

 大井弘子はそのように言って、チンピラの巣窟に分け入り、妹もそれについていく。
 ――あれ?
 オフィスビル一階奥。まだ新しい16CC事務所を訪れた小娘はあることに気がついた。
 ――キンダーCC。
 以前あった看板は無くなっていた。かわりに『16CC games』という看板がかかっている。それだけではない。事務所入り口近くには、ゲーム部門の商品であろう、さまざまなグッズが飾ってある。キンダー時代のゲーム、DVD。マグカップであるとか、タオル、枕――。
 「こんなもん金出して買いたくねーよな」
 小娘はぼそりと言った。姉は微苦笑をしただけであった。そして、今回は妹ではなく姉が、インターホンを取った。
 「恐れ入ります。大井と申します」
 姉はインターホンの向こうにいる誰かと会話をし、小娘は辺りを見回している。
 ――結構こういうグッズも高いんだよな。
 ファンから搾り取るだけ搾り取る。絞られるファンに対する愛は……市原たちには無いのだろうか。
 やがて、愛のない男市原が出てくる。
 いつものようにぼんやりとした、覇気のない表情。
 「いや……どうも……」
 そつ無く笑い、腰も低い。けれど……それは、謙遜ではなくて卑屈。
 「どうぞこちらへ……」
 ヒゲの男はそう言って小娘たちを中に導きいれる。前回と同じように。前回と同じ会議室へ。
 小娘はあたりの様子をそれとなく観察している。会話の無い社内。笑顔も無く、ちただみんなうつろにパソコンに向かう。
 ――音楽製作担当とキンダーの残党。さらにはサイゴンプロ。
 三つの勢力を束ねる力。倉田にあるのか。そのことは分からないが、社内はどうも暗い。
 「花世!」
 立ち止まる妹の名前を姉が呼び、そこで小娘も会議室に入った。
 白いテーブルにパイプ椅子。会議室には市原がいるだけである。
 「ああ、ちょっと待っててくださいね。お茶をお持ちします」
 市原はそう言って部屋を出て行った。
 「……芝崎とか松木とか……あいつら、上司をなめてやがんな」
 丸山花世は言った。
 また遅刻。呼び出しておいて、自分たちは絶対に市原よりも先には出てこない。いつでも偉そうにふんぞり返って重役出勤。
 「……ムカツクな」
 小娘は腹を立てている。大井弘子も顔を曇らせている。