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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 16CCの人間には悪いところはない。あるとすれば、やはり、才能が図抜けていないということ。社長の倉田もオタク業界ではそこそこ名が売れているのだろうが、全ての人が知るような名曲を作っているわけではないし、ほかのスタッフも同じ。キンダーから合流した連中に至っては敗残兵である。
 ――力のない人間、心の弱い人間が、不安から寄り集まっているだけ。
 小娘はすでにそのこと気がついている。そして作品を作る人間はいつでも弱い人間ではダメなのだ。三神が言ったとおり。作り手はアンカーにならなればならない。それができる大きさ、強さがないといけない。
 「そういうの……ねーよな、きっと」
 小娘は呟いた。
 と。
 そろそろ姉が戻ってくると思った矢先のこと。
 もの書きヤクザの携帯が鳴った。
 「あれ……アネキか……」
 小娘は携帯を取る。
 「もしもし……」
 ――ああ、花世。
 「何よ……」
 ――今日、ちょっと遅くなるから。
 「ああ、はいはい……」
 小娘は適当に言った。
 ――一時までには戻ります。
 「ん。分かった」
 ――それから、明日のことだけれど、明日、また16CCに行きます。さっき市原さんのほうから連絡があって。
 前回の不愉快極まる打ち合わせから相当の日がたっている。その間、市原からは何の連絡もない。
 「ずいぶんとのんびりしてやがるよな」
 ――お忙しいとかで……ねえ。
 大井弘子の言葉には含むところがある。
 どうせどうでもいいことで時間を潰していたんだろう……というような、諦めであり軽蔑。妹にもそれは良く分かっている。
 「……明日ね。また、三時ごろ?」
 ――そう。
 「なんか……荒れそうじゃんか。また」
 小娘は予感して言い、それに電話の向こうの姉はこたえなかった。
 ――じゃ、またあとで。
 そこで電波は途切れた。小娘は呟いた。
 「なんで作業以外のどうでもいいところでストレス感じなきゃいけねーんだよ」
 
 そして。
 翌日。
 日差しは鋭いが、風は涼しい秋風の日。
 小娘は姉につれられるようにして再び16CCの事務所を訪れることとなったのだ。
 それはある意味運命の日、であった。
 作品にとっても、そして16CCにとっても。
 「行きましょう」