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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 「つぶれるのは惨めだからなー」 
 倒産して全てを持って行かれる。全てなくなる。権利も、作品も。何もかもが。倒産とはそういうこと。
 ――キンダーの社員は自分たちが味わったものを書き記したほうがいい。というか、書かなければならない。それこそが作品を作るということ。
 姉の大井弘子も妹の丸山花世もその点では一致している。
 自分たちが不細工に転げまわった跡。それを、客に見てもらえばいい。そこにこそ感動はある。作品は作り手の成長記録でもあるのだ。
 倒産しました。権利は持っていかれました。つきあいのある雑誌はあれだけ広告費を吸い上げていたのにキンダーの倒産に対してコメントひとつ出しませんでした。で、16CCになったので昨日と同じように、エターを作り始めます。もちろん、その間のことについては製作者は特にコメントしません。
 昨日と同じ。
 いつも同じ。何のかわりもなく穂積丈が出てきてプレイヤーに説教垂れて、テキトーに話が進んで美少女がとってつけたようにして泣きだして、で、カンドーの押し付け。
 それは作品の魂から見てどうなのか。
 そういう作られ方をするエターという作品の魂はどう思っているのか。
 そんな矜持のない作り方が許されるのか。それで、通るのか。それで通してしまっていいのか。
 姉も妹も思っている。
 ――それは間違いだ!
 そんな馬鹿なことがあっていいわけがない。
 クソにたかる蝿のような意地汚さ。薄汚さ。誇りの欠片もない醜い生き方。作り手のいやらしさが透けて見える、そんな作品を作って良いのか。丸山花世は思っている。そんなものは作る意味がない。
 もちろん、市原や芝崎には何か言い分があるのだろう。だが、彼らは自身が物語を作るということができない。何の能力もなければ才能もないのだ。そしてそんな人間の言い分にしたがっていたからこそエターナル・ラブもキンダーガーデンも瓦解してしまった。
 ――自分たちの馬鹿さ加減。自分たちの至らなさ、能力の根本的な欠如、客に全部見せてやれよ。
 自分たちと向き合うこと。それが物を作る意味。作品が生まれ意味。 
 「タイニーよりは……やっぱり本家のほうが、重みがあるかな」
 姉が使っているデスクトップのコンピューターを眺めながら小娘は言った。