むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4
ボクには分かる。あの二人は会社を自分のものにしようとしているんだ。
俺の会社。俺だけの会社。
けれど、自分たちは一切の責任を負おうとはしない。
担保は霧子先輩。
何か事が起こって、詰め腹を切らされるのは霧子先輩。
人の命を食い物にして自分たちは偉そうに振舞う。
昨日と同じように。そう。昨日と同じように。
霧子「……」
総太「霧子先輩……」
この人を……この人だけは何としても守らなければならない。
なんとしてもだ。ボクの命に代えても。
ボクの……この安い命に代えても。
でもどうしたらいい? どうすれば……。
もの書きヤクザは昼間、激昂しすぎたのだろう。いつの間にか、ノートパソコンの前で居眠りをしている。
外ではちりんちりんとガラス製の風鈴が音を立てている。
やがて……。
「あ……」
小娘は気がついて眼を開ける。いつの間にか、大井弘子は部屋に戻ってきていたようである。
「……」
大井弘子は妹が書いたシナリオを見ている。
以下を爆発させたような作品。名指しで芝崎と松木が非難されているシナリオ。
「ああ、アネキ、帰ってきてたのか……」
小娘はぼさぼさの頭を書きながら起き上がる。
「……いいわね」
姉は言った。
「霧子というキャラも。総太の言葉も」
霧子は……言ってみればエターナル・ラブという作品そのもの。時代の流れに翻弄され、不愉快な中年男達に食い物にされてぼろぼろにされていくエターの魂そのもの。その霧子のためにただ一人切歯扼腕し、激昂する総太は丸山花世の想い。
「……芝崎と、松木は癌だと思うからさ。とりあえず実名で出してみたけど、いろいろと問題もあるかもしれないし。その部分はアネキに任せるよ。変えたかったら変えて」
「いや。このままで行きましょう。きちんと名指しで書かないと芝崎さんや松木さんには、『私達が本当にどう思っているか』を理解できないでしょうから。それに市原さんは『魂を削れ』と言ったわけで……誰の魂を削るかはこちらに任されているのだから」
大井弘子は冷静に妹が書いた作品を見ている。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4 作家名:黄支亮