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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 「誰もさ……作品のこと考えないんだよ。エターっていう作品の行く末。作品の未来。どいつもこいつも自分が目立ちたいばっかり。エターを作った市原。エターを作った芝崎。だからボクちゃんかっこいい。てめーのどこがかっこいいんだよ。豚みてぇな面しやがって、アホかッ!」
 丸山花世は腹を立てている。
 「最後の最後まで作品にすがって生きながらえようとしてる。そういう自分を醜いとも思ってないんだ。連中は。最後の最後まで食い散らかして……何が声優集めてイベントだよ。人の金でちゃらちゃら遊ぶだけのダニのくせしやがって!」
 作品はエターナル。不滅である。人の命は有限。けれど作品は世代を超えて受け継がれていくもの。
 「……作品泣いてるよなあ。なんで分かんねーのかな」
 三万本は売れる。市原はそのように楽観的だが、そんなことはおそらくあるまい。多額の広告費をかけて、それでも結局、受注は一万本程度。16CCは当然、損を出すことになる。だが、それでもいいのだ。NRTという親会社が支援をしてくれるから。NRTも16CCもクリエイターに優しいから、何をしても許される……。
 ――んなわけねーだろ。
 金は無尽蔵ではない。それともNRTという会社は儲かりに儲かっていて、で、あるから税金対策として16CCをやっているのか。どうもそんな風情ではない。
 「……どいつもこいつも無責任なんだよな。誰も作品に責任もってねー」
 会社全体に広がる無責任体質。そしてぼろぼろになったエターナル・ラブは嘲笑の対象となるのだ。
 ――こんな程度。
 ――つまんねー。
 ――カーテンコールで終わらせたほうがよかったんじゃねーの?
 そのような評価は、シナリオの作業が終わる前から目に見えている。そして……作品は立ち枯れるのだ。嘲笑されて忘れられていく。
 「アネキ……こんな悲惨な作品を私は見たことがないよ」
 丸山花世は……作品をひとつの命としてみている。市原や芝崎と同じレベルの一個の独立した命。小娘には豚のように愚劣な市原たちが作品を虐待しているように感じられる。それはどうしても許しがたいこと。
 「だからこそ、私達だけでも作品の側に立ちましょう。作品の尊厳を守りましょう」
 大井弘子は言った。
 「あの人たちにはそういう感覚はないみたいだから」
 姉は決然と言った。