むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4
小娘は思っている。芝崎の気が狂った行動も……結局は、ただプライドだけを肥大させた小心な人間の『作れる人間』に対する、必死の背伸びではなかったか。もっとも、背伸びも何も、能力のない人間がいくら気取ってプロデューサーを演じても何の意味もないのだ。まったく意味のない自己満足。そのような演技もキンダーガーデンという会社が存続していて、隆々と仕事が回っていれば皆が納得するのかもしれない。だが、キンダーガーデンは潰れたのだ。潰れて綺麗さっぱりなくなった。会社を潰した人間、潰れた会社の社員がいまさらに名プロデューサーを気取ってホワイトボードを前に奇妙なダンスを披露したところで何の意味もない。今の芝崎はせいぜいが頭のおかしなピエロ。
「花世。私は、今回の仕事、いろいろな意見はあると思うけれど、受けてよかったと思うのね。あなたには芝崎さんや市原さんのような半端な人間をよく見ておいて欲しい」
「……」
「ああいう作り手にはなってはいけない。ただ、傲慢なだけで何の価値もない人々」
「市原のおっさんは……傲慢な感じではないけど。むしろ、卑屈? いずれにせよ私はあんまり感心してないけど」
「傲慢な人間は簡単に卑屈になるのよ。卑屈な人間は何かのきっかけで簡単に傲慢になる」
「……ああ、まあ、そうかもなー。あいつは、そんな感じか」
市原も……腰が低く、そつがないように見せて、時に、感じの悪い対抗心のようなものをしぐさや言葉に覗かせる。
かつての自分の部下にもそうだし、権利を持っているブランにもそう。自分の親分である倉田にも暗い視線を送っている。あるいは、
――俺だってかつては社長だったんだよ! 今は、こんなふうにてめーの下についてるけれど、何かあれば必ずひっくり返してやる!
とでも思っているのだろうか。その証左がメールアドレスの『FMB』。もっとも、市原が状況をひっくり返すことは金輪際ない。
「……エター。作品が哀れだよなー」
小娘はため息をついた。
それは昨日も三神智仁の前で漏らした呟き。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4 作家名:黄支亮