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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 「……」
 大井弘子は自分の心の中から適切な言葉を捜しながら話している。
 「……いろいろと思うのね。市原さんのこともそうだし、ほかのキンダーのスタッフも」
 「どんなことを?」
 「結局……彼らには過ぎた成功だったんでしょう。エターナル・ラブは」
 「……過ぎた成功」
 「二十代……早ければ十代でゲーム業界に入って。今から十年ぐらい前といえばプレステ2が出た頃で、だからまだ、業界的にも伸び代のある時期で」
 「……」
 「作ればある程度はけて。エターに関して言えば十万本単位で売れて。オタクの若者が、憧れだった声優に指示出ししたり、ライブを開いてみたり、雑誌の取材を受けたり……二十代にして脚光を浴びて未来のクリエイターとか称えられて」
 「……芝崎が脚光ね。あんな馬鹿が」
 丸山花世は苦りきっている。
 「本人も悪いのだろうけれど、持ち上げる世間も悪いのでしょう。本当であれば、上司にたしなめられたり叱られたりするところをそういう経験をまったくせず……」
 「俺たちがいなけりゃ現場は回らない、か……」
 三神智仁の言葉が思い出される。
 「大事な経験、大事な挫折をまったくしないままに十年間」
 大井弘子は物憂い顔をしている。
 「でも……若い時でないと響かない苦言とか叱責ってあると思うのね。我慢することや膝を屈することを覚えなければならない時期。人の哀しみや、苦しみを学ぶ時期。そういう時期を彼らは持ち得なかった」
 丸山花世は思っている。
 姉が……わざわざ居酒屋稼業を続けているのは、そこにこそ人としての大事な何かがあるからではないか。
 「しかも……彼らは、本当の意味で苦吟して作品を作っているわけではない。要するにただの雑用でしょう。下働き。エグゼクティブ・プロデューサーなんて格好つけて言ってるけれど、そんなものに何の意味もない。それだったら係長とか主任とか、そういう肩書きのほうがよほど気が利いている」
 「スペシャリストになれないから、ゼネラリストって奴ね……」
 あるいは。