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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 午後四時半の山手線は込んでおり……。
 物書きヤクザは恵比寿から品川までの旅の供。
 「なあ……アネキ」
 つり革に捕まったまま小娘は言う。普段は強気の小娘もいつになく疲れ気味。
 「なんなんだ、あの芝崎って奴は……」
 「……」
 姉は何かを深く考え込んでいる。
 「なんかさー……あいつ、自分の仕事間違えてるよな。作品作るのって地味な作業なわけでさ。なんか急に机の上で転げまわったり、気狂いみたいにホワイトボードに意味フメーな記号書き並べたり……何が『フック』だよ。馬鹿か!」
 「向いてないんでしょうね。仕事」
 大井弘子は言った。
 「多分……あの人は、というか、市原さんもそうなのだけれど、作品を作るのが好きでこの業界に入ってきたわけではないのでしょう。格好良いから、聞こえが良いから、だからゲーム業界に入った。華やかな感じがしたから……言ってみればファッション」
 「ピアスとかシャブとかと一緒ね……作品の神様なめんなよ、ったく……」
 列車は五反田を過ぎる。
 「聞こえが良いから。時代の最先端だから……結局、脚光を浴びたいというのが一番なのでしょう。自己顕示欲、自己愛。スタンドプレー」
 「……」
 「人は、同じような性格のタイプが集まるもの。倉田というミュージシャン崩れ。市原さん。芝崎さん。全員が全員、作品を作ることよりも自分の名声を高めることに執着する」
 「……単なる目立ちたがり屋じゃんか。なにイキってんだよな。クズが」
 ホワイトボードに向かって奇妙な線を書きなぐる芝崎。あれは、
 『俺はやっているんだ』
 という自己アピールであり、ゲームのプロデューサーをやっているという自己陶酔。芝居。あるいは『ごっこ』。プロデューサーごっこ。もちろんそんなことに本当の意味での価値などないし、付き合わされるほうは大きな迷惑でしかない。 
 「馬鹿じゃねーの。そんなことやってっから会社潰れんだよ」
 「そうね」
 大井弘子は頷いて続ける。
 「作品を売り込むのではなく、自分の存在を世間に誇示したい……ある種の人格障害なんでしょうね」
 「気狂いかよ」
 「それはでも……」
 「?」
 「どうなのかしらね。もともと、そういう性向の人だったのでしょうけれど、それが磨かれていった。悪いほうに育ってしまったのか」