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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 「安治、安治、安治夕子……この名前が気に入らないんだよなー……夕子、夕子……夕子……」
 「何が気にいらねーんだよ」
 丸山花世は怒って叫んだ。
 「てめー、何が気にいらねーんだ!」
 芝崎は丸山花世とも、大井弘子とも目をあわさず、ホワイトボードに夕子の文字を狂ったように書き殴りはじめた! 市原も松木も見てはいけないものから目をそらすようにして自分の膝を見ている。
 「名前……」
 芝崎はホワイトボードに奇妙な線を描いている。完全な異常者である。だが。奇行を見せ続ける芝崎に丸山花世はさらに追加で叫んだ。相手が狂人だからなんだというのだ? 言って分からない相手であればこその鉄拳!
 「おいー、てめー、ちゃんと会話できねーのかよ! おいっ!」
 小娘は立ち上がり、そこで市原が立ち上がった。このまま放っておけばきっと丸山花世は芝崎の後頭部に正拳突きを叩き込むに違いない。流血沙汰になれば、それは間違いなく市原にも監督責任が及ぶ。
 「名前のことは……あとでいいから」
 市原の言葉に芝崎はふて腐れたように下唇を突き出した。不細工な顔がよりいっそう不細工に歪む。それはまさに吐き気を催す醜さ。
 「なんか気にいらねーんだよ、名前が!」
 眼鏡をかけたなまっちろい豚野郎は吐き捨てるようにして言い、ワンマンショーを打ち切った。
 丸山花世も席に戻る。
 ――こいつ、他人とコミュニケーションをとるってことができねーのか?
 会話を成立させにくい人物。奇妙なプロデューサー芝崎はひねた顔のまま席に戻った。どうも目の前にいる三十男は本当に知的障害か、人格障害があるようである。まともな人間ではない。
 「……ほかには?」
 奇行をたっぷりと見物した大井弘子が尋ねた。
 誰も何もこたえない。
 「では、今日はこのあたりで。かまいませんね?」
 大井弘子は席を立ち、丸山花世は芝崎と松木の両人にな侮蔑の視線を送った。不思議なことに、気狂いワンマンショーを見せたことで満足したのだろうか。芝崎次郎は魂が抜けたようにしてぼんやりしている。
 ――なんか……気持の悪い男だな……。
 侮蔑から薄気味悪さへ。はじめてみる異常者のダンスにつわものである小娘も寒気を感じている。
 ――こんなんで、ほんと大丈夫なのかよ……。
 16CCの未来は限りなく暗い……。