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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 丸山花世ははっきりと言った。男達は黙り込む。市原はただ口を結んで下を向き、芝崎は血走った目で小娘をにらみつける。松木は……表情がぼんやりとしていて心のうちが読み取れない。そして悪くなった空気を無視して大井弘子が言った。
 「ああ、そうだ……」
 姉は妹の非礼をたしなめたりしない。自分でも思っていることだからであろう。
 「主人公の名前ですけれど……」
 大井弘子はすでにそのなぞなぞの意味を知っている。
 「妹が考えたのですが、魚の名前を貰っています。鈴木だったらスズキ。平はタイ。安治は……アジですね」
 姉がそのようなことを言ったのは……場の空気を和ませる意味もあったかもしれないが、もっと別の効果を期待してのものではなかったか。つまり……相手の能力を測る。三神はこちらが語る前からキャラの名前に隠された法則を読み解いていた。そして。市原が言った。
 「ああ、そうだったのですか……」
 ヒゲの男はただ納得しただけであった。謎が解けてもどうということはない。松木もぼんやりしている。ただ……芝崎だけがまたもおかしな行動を見せた。
 「あー、はいはい、そんなことはわかってましたよ!」
 まるでふて腐れたような、いらだったような叫び。
 「そんなことは、最初から気がついてました!」
 頭の狂った幼稚園児は歯噛みをするようにして喚いた。そして、小娘は思った。
 ――こいつゼッテーわかってねーよな……。
 分かっていないのに、何故、分かっていたと言い張るのか。それが何の得になるのか。小娘には意味が分からない。
 そして、気のふれた中年男芝崎は突然言った。
 「名前、キャラの名前がどうもしっくりこないんだよ……」
 「……」
 「気に入らないんだよな」
 「もう作業入っちまってんだけど……」
 いまさら、何言ってやがる。丸山花世はむかっ腹を立てている。そういうことは、シナリオ作業に入る前に言え……だが。
 「名前名前名前……」
 芝崎は話を聞いていない。どうも、この男、本当に知的障害があるのか。松木も市原も突然おかしな具合にスイッチが入った芝崎のことを黙って見守るばかり。そして。なまっちろい豚野郎はおもむろに立ち上がり、それから会議室のホワイトボードに何かを書き始める。