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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 市原は転げまわっている芝崎を促した。芝崎は、小娘の軽蔑するような眼差しにようやく気がついたのか、恥じるのではなく、威嚇するようにして歯を剥いた。
 ――程度の悪いブタヤロウだな、こいつ。
 このような低能は言葉では分からず、暴力で躾けるべき。小娘はいつ白豚に鉄拳を見舞うか、そのタイミングを計り始めている。
 「プロットのことなんですが……」
 松木が言った。凶暴な芝崎よりは、ディレクターのほうが多少はましなのか。
 「安治夕子は最初、顔は……ゲームが開始した当初はわからないんですよね……」
 「そうです。最初のうちは出てきませんね」
 「何時頃、このキャラは出て来るのですか?」
 「ゲーム開始から四日目を予定しています」
 「そうですか……」
 松木は何を言いたいのか。あるいは、何も言いたくないのか。
 「ラジオの投稿が縁で主人公とは知り合うわけですね……」
 松木は言い、芝崎が言った。
 「投稿がフックになってるわけか……」
 「は?」
 丸山花世はたまりかねて言った。
 「何よ、フックって……」
 小娘のいらついた叫びに、芝崎は黙り込む。自分はヒステリックに叫ぶが、他人が突っかかってくると押し黙る。この男、やはり重度の精神疾患を抱えているのか。
 「フックってなんなのよ?」
 「……フックというのは、物語の……何と言うか、重要なキーというか……」
 「はーん」
 丸山花世は冷たい視線を白デブに送った。
 「なんかさー市原さんだっけ、あんたも座組みがどうとか言ってたけど……なんで、この会社の人は自分だけにしか分からん暗号みたいなことを得々と語るのよ」
 業界人気取りのクリエイター気取り。けれど。自分にしか分からない隠語を偉そうに語られても、相手に伝わらなければ何の意味もない。むしろ誤解を与えるのであれば、そのような符丁は使わないほうがよほどまし。もとより頭の良い人間は相手にわかるように伝えるもの。相手と自分の間に高い壁を築くような言葉ならばないほうがいい。だいたい、大井弘子も丸山花世も、そのようなおかしな業界用語は使わないし、それは、彼女達が知っている仲間の作り手も同じ。けだし、きちんとしたものを作っている人間ほど業界用語、というか、個人だけが分かるような言葉は使わないのだ。
 「感じ悪いよ。人間として」