むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4
怒りの矛先は市原に……ということは、大井弘子や丸山花世に対して向けられている。
――こいつらなんだ?
生意気な小娘もあっけに取られている。
初対面の相手である。初対面の相手に『俺達は聞いてねえ』。まともん人間ではない。
「知らねえんだよ! なんだ、タイニー・エターって!」
松木は歯をむき出しにして叫び、芝崎もつばを飛ばして激昂する。
「認めねえ! 絶対に、認めねえ!」
「い、いや、それは……」
現場の反乱に市原はなす術がない。そして大井弘子は冷静であった。
「三神さんからそちらに話は伝わっているはずですが……」
「いや、はい、聞いています……」
市原は息も絶え絶えに言った。要するに、情報は市原のところで止まっていた。そういうことだろう。それにしても。
――こいつら馬鹿だな……。
丸山花世は思っている。
――認めるも認めねーも、てめーらただの下請けじゃんか。ブランに権利譲ってもらっておきながら、何が認めねーだよ。こいつらてめーの立場ってもんがわかってねーな。
目を血走らせて喚く三十男。
いったい三十年、どこをどう生きて来ればこのような愚かしい人間になれるのか。しかも一度はキンダーガーデンは倒産しており、と、いうことは、それなりの試練を受けてきたというのに、それでもまだこの知能程度。芝崎も松木も学習能力は絶無であるのか。
アホなエグゼクティブプロデューサーはまったくおさえというものが効かない。そこで、というか当然のように大井弘子が言った。
「どうもそちらの社内で連絡の行き違いがあったようですね。それは、そちらサイドの問題ですから、あとでゆっくり話をしてください」
内輪争いは私らが帰ってからやってくれ。
大井弘子は言外にそう言っているのだが、理解力に劣る芝崎には大井弘子の真意は多分伝わっていない。眼鏡のとっちゃんぼうやはいやな目を市原に向けるばかり。
「お話を進めてくださいませんか?」
美人はそういって市原を促した。
「何かご用件があると承って、それで、こちらにまかりこしたわけですから」
市原は、そこで慌てて言った。
「ああ、はい、そう、そうでした。ええと、思い出したのですがボクのほうから、一点あります。それはキャラクターのことなのですが……」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4 作家名:黄支亮