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灰かぶり王子~男女逆転シンデレラブストーリー~

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 此処で数時間前に遡る。アールイは夕食の片付けをしていた。
 そのほぼ同時刻の、ペテロアーヌ城でのことである。
「セイル様、夕食の準備が整いました」
 一人の侍女がある部屋でその部屋の主である男に丁寧に礼をした。
「あぁ、今行く」
 声変わりが来ていてもおかしくない年齢ではあるが、未だ幼さを残した声で返事をしたこの部屋の主、その人こそペテロアーヌ王国の第一王子にして次期ペテロアーヌ国王セイルである。
「ん?」
 セイルは窓に異変を感じ、そのまま窓を開けバルコニーに出た。
「…あぁ、お前か」
 そこには赤目の烏がいた。烏はセイルの声に応えるかのように「カァー」と一声鳴いた。
 やけに人馴れした、今にも夜闇に紛れてしまいそうな濡れ羽色の烏は、白く小さいものをくわえている。この烏がセイルの元を訪れるのは初めてではない。烏がくわえているのは手紙だ。
 《セイル王子へ》で始まるこの手紙の送り主が誰かは分からない。しかし敵ではない。それだけは分かる。
 セイルはこの怪しすぎる手紙を侍女や近衛には見せずに自分の事務机の引き出しにこっそりとしまい込んでいた。
 烏が此処へ来るのはこれで2回目だ。
 烏が運ぶ、差出人不明の謎の手紙。今回の手紙の内容に目を通し、セイルはにやりと口角を上げた。
 セイルにとって、とても都合の良い内容だった。
 これが本当ならば、セイルは最終手段を取らずに済むだけでなく、もう絶対に手に入らない、手の届かない場所にあると思っていたものが手に入る。彼にとってこの手紙は後者の意味の方が遥かに大きかった。
 セイルは飛び去る烏を眺めながら、先程侍女が来た理由と両親を待たせているだろうことを思い出して、たった今届いた“郵便物”を事務机の引き出しの奥に隠し、自室を後にした。