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灰かぶり王子~男女逆転シンデレラブストーリー~

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 所変わってペテロアーヌ城。
 セイルは僅か十七歳にして、政治的な仕事に携わっていた。父である王はあちらからもこちらからも引っ張りだこだ。今日もセイルが父を探していると、
――あっ、いらっしゃった。
 父の後ろ姿を見つけ話しかけようと思ったが、
『ちち…』
 近くにいた臣下――確かあれは治安大臣のメハース卿だ――が、父に話しかけるのを見て踵を返した。
『王、またカヌラの領主が謁見の申し出です』
 カヌラというのは、国境近くの小さな村だ。
『…ハンスール卿か』
『はい』
『国境の近くは未だ治安が回復しないか』
『こちらも全力を尽くしているのですが…』
『王ー!同盟国のコレック王国から物騒な文書がー!!』
『何だ騒がしいな』
『何でも「近々戦争を仕掛けるから援軍を頼みたい」とのことです』
 戦争とは物騒な話である。
『その戦争を仕掛ける相手国は何処だ?』
『…それが……』
 そこから先は声が遠すぎて聞こえなかった。自分にはまだ関係のないことだ。普通にいけば、セイルが王位を継ぐのは、30歳になってからである。まだ13年もある。焦らずに王の職務を父の背中を見ながらゆっくり学べば良い。
「しかし、書類処理という仕事は実に退屈だな」
 セイルは、引っ張りだこの父の代わりに書類に目を通し、可ならサインを、不可なら「不可」と書き込む仕事をしていた。本来は王の仕事であるが、忙しくて手が回らない雑務はセイルに回ってくる。子煩悩な王としてはセイルにやらせたくはなかったらしいのだが、妻である妃が「どうせ将来やる仕事なのだから」というそれらしい理由を付けてセイルに押し付けた。
 実際には「父上が無理するから、ごめんね」というように親子間での頼み事として本人たちの間では了解があったのだが、王はセイルが自分の仕事をすることに反対であった。
 セイルとしては、責任ある仕事を任されることに不満はなかった。ただ、同じことを繰り返すだけの単純作業に飽き飽きしていただけで。彼の不満は、もっと根本的なところにあるのだから。
――何故私が次期王なのだろう。
 セイルは元々、王位継承とは関係のない立場にあったのだ。
本来、王位継承権は6歳離れた彼の兄のものであった。王にはならない子供として、伸び伸び育ったセイルは好きなことを幼い頃からたくさんした。王家のたしなみである乗馬は勿論、毎日近衛兵の詰所に通っては剣や弓を習った。庶民の子供のように木登りをして服を泥だらけにしては乳母(ばあや)に叱られた。