無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~
Episode.23 始まり
それから数十分後。
「おい、あんまりうろうろするn「なぁ鬨!あれなンだあれ!!」
興奮した様子で鬨を後ろから羽交い絞めにしながら、ヴェクサの指差した方向には、荒野によく居る兎の様な魔物が群をなしていた。
「ウーリーだ。草食で此方が襲わなければ人を襲うことも無い。極めて大人しい魔物だから、金持ちのペットになってたりするな。毛並みがいいから、ハンターの獲物にもされやすいんだ」
「へ〜ぇ!」
ヴェクサは感心した様子でその「ウーリー」を見ている。
鬨はうんざりとした様子で溜息を吐いた。
「迷惑はかけるな」と言った途端にこれだ。まぁ、仕方のないことかもしれないが・・・。
今まで外に出ることなくあの街の中だけで暮らしてきたのなら、見た事のないものばかりだろうから。
「あんなのいつでも見れる。いい加減にしないと、日が暮れる前に隣町に着けないぞ」
「お、おう。そうだったな・・・」
ぱっ、と離れたヴェクサが、見るからにしゅんとなっている。
今この男に犬の耳としっぽがあったなら、間違いなく下をむいていただろう。
「・・・・〜〜っ、隣町に行ったら、飯食いながらゆっくり説明してやるから・・・」
それが限界の妥協点だった。しかも、かなり緩めの。
「!!よし、行こう!すぐ行こう!」
「・・・・・・・・・・」
笑顔を取り戻したヴェクサがさっさと歩き出すのを見て、鬨はもう一度重い溜息を吐いた。
幸先が思いやられるな、これは・・・・
作品名:無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~ 作家名:渡鳥