無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~
Episode.22 旅立ち
ヴェクサの息が落ち着いて話せるようになると、鬨はヴェクサの言葉を待つまでも無くすべてを話した。
日記が隠してあった事。その日記を読んだこと。
そして、石のこと。
ヴェクサは、返事をするでもなくただその話を静かに聞いていた。
「―――つまり、鬨が手に入れてたその石が「魔石」で、そのおかげで俺は成体になれた・・・ってことか?」
「まぁ、そういうことだ」
話の最後にヴェクサがそう聞くと、鬨はそう言って頷いた。
「その石が魔石だと気づけたのも、この術が成功したのも日記のおかげだ・・・・あ、そうだ」
そう言って、思い出したように鬨は日記を取り出してヴェクサに差し出した。
「あんたに返しとく。俺が持ってても意味無いだろ」
「・・・ン・・・なぁ、鬨」
「ん?」
「――――ありがとう」
「・・・あぁ」
ヴェクサは大事そうに日記を受け取り、しばらくその日記を眺めていた。
作品名:無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~ 作家名:渡鳥