無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~
―――――そうして走ること数分。
二人は荒野に座り込んでいた。
荒く息を繰り返すヴェクサの横で、鬨は息を乱すことなく座っていた。
「出られただろ」
ヴェクサの息が落ち着くのも待たず、鬨がそう言った。
「あぁ」
ヴェクサはなんとかそう返して、どさっ、と背中から倒れ込んだ。
「街、綺麗に残ってるぞ」
「・・・・あぁ」
それ以降、ヴェクサの息が落ち着くまで会話は無かった。
ただ、鬨は街の向こうから昇り出した朝日に目を細めていた。
作品名:無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~ 作家名:渡鳥