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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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鬨が地下に入ってしばらく。
鬨は罠にはまらないよう、周りに細心の注意を払いながら暗闇を進んでいた。
明かりは無いが、暗闇に慣れた目は充分に周りを見ることができた。
あとは、道を間違えさえしなければすぐに着くことができるだろう。

早足で進みながら、先ほどの日記の事を考える。
実験の記録。研究。
日記を見る限り、おそらく・・・いや、確実に、ヴェクサは人間ではない。
そうでなければ、今頃墓の中の人であるはずだ。
「技術」を「禁忌」とされてもう既に4000年は経っている。この実験は魔術が「禁忌」となる経過で中止になったようだから、ギリギリでもヴェクサは3000年を生きていることになるのだ。
竜や魔族の者ならそれぐらい生きている者もいるかもしれない。
だが、見たところヴェクサはそう言った種族ではなかったし、そうであったならこんな街にはいないだろう。彼らは人間を毛嫌いしている節がある。
そもそも、日記でそうでないことはわかっている。
・・・ヴェクサはおそらく、「創られた」人間だ。
この研究で唯一成功した、「実験体」。そう、日記に書いてあった。
まぁ、「魔石」を見つけられなかったせいで完全に成功とまではいかなかったようだが。

胸糞が悪い。
なにが「実験体」だ。

「・・・・・っ!!??」

もうすぐで研究室に着く、というところだった。
鬨は、いきなり自分を襲った衝撃に思わず膝をつく。

「・・・・っ、なんだ!?」

いきなりのことに頭が追いつかず、少しパニックになりながらも周りを見渡す。
そして、すぐに揺れがこの地下全体を襲っていることに気付いた。
どうも、普通の地震ではなさそうだ。

あまりにも大きな揺れに起き上がれずにいると、びしっ、という音が響いた。
上を見れば天上にひびが入っていた。この揺れに耐えきれていないのだろう。

「まずい、な」

そう呟いた瞬間、天井が音を立てて崩れ落ちた。
鬨はとっさに前に飛んでそれを避けるが、崩れ落ちたそこからどんどん崩れ落ちてきりがない。
それをこけそうになりながら避け、研究室へ急ぐ。
もう既に、退路は無かった。