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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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Episode.19 日記



日記には、本当に事細やかに実験の様子や研究の事が書いてあった。
たまに専門用語が出てきたりもしたが、そこもきちんとわかるように書いてあり、これを書いた「アスタナ」という人物が初めからこの日記を「こういう形」で人に見せようとしていたことが分かった。現に、そのおかげで鬨にもきちんと意味を理解することが出来ている。

日記には、主にある「石」のことが書かれていた。
「魔石」、と言うらしい。その石の図が日記にも書いてあった。どうも、その石が実験に必要不可欠なのだが、なかなか簡単に見つけられる石ではなく、貴重な石らしい。
なんでも、魔法に強く、強力な魔術にも耐える上にその源と言える魔力を封じ込めることが出来るらしい。その石に魔力を込めるのには特別な魔術が必要らしいのだが、今はその魔術が「禁忌」とされている。
しかし、この日記にそう言ったことは書かれていない。つまり、これは魔術が「禁忌」となる前の物と言うことになる。
日記の中の図では、高さ15?、横幅10?程度の石の図が描かれていた。
ちょうど鬨の握りこぶしより一回り小さいぐらいだ。
図の中の青く透き通ったガラスのようなその石は、少し緑を帯びて綺麗に輝いていた。

日記を読み進めていくうちに、実験はその石が無かったせいで完成しなかった、という事もわかった。現に、最後の方は石を探して東奔西走する様子がほとんどだった。

―――ただの憶測だが、鬨はこの石が人間でいう「心臓」ではないのかと考えている。
そうでなければここまで必死に探したりはしないだろう。
それに、昔読んだ文献に「魔力で動く人形」というものがあったということが書いてあった。これがその時代に書かれたものならば、ありえなくはない。

そして、石を見つけたという事が書かれないままこの日記は終わっている。
鬨もこんな石は見た事がない。かなり貴重らしいから、それも当たり前かもしれない。
しかもアスタナが何年も各地を巡って探しても見つからなかったような代物だ。
しかし、鬨はこの石の図を見た時から何か引っかかりを覚えていた。
なにか、何処かで見た事がある気がするのだが、どこで見たのかが思い出せない。

「くそ・・・・っ」

どこで見たのか思い出せずにもんもんとしているうちに、時間は過ぎていく。
早くしないと、ヴェクサとの約束の時間が来てしまう。

「・・・・・・・・」

そういえば・・・

「あいつ、遅くないか・・・?」

そうぽつりとつぶやいた瞬間、背筋に悪寒が走った。
嫌な予感がする。そして、嫌なことに自分の予感はよく当たる。

鬨はそんな考えを振り切るように走って地下の入口へと向かう。
日記は外套に隠れるよう、後ろのベルトに挟んでおいた。後々必要になるかもしれない。持って置いて損は無いだろう。
とにかく、今は地下に急いだ方がいい。

鬨は突き動かされるように暗闇の中に飛び込んだ。