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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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結局、鬨が買ったのはあのガラス細工だけだった。
途中で興味深そうに立ち止まったりはしていたものの、やはり最後には買わずにその店を後にする。
そうやってすべてとは言わないが、大方の店を歩き回った頃には朝市が終わり始めていた。

「一度宿へ戻るか」
「そうだな・・・そろそろ腹も減った」
「そういえば、昨日の夜から何も食ってなかったな」
「それで、なンでお前は平気そうなンだよ・・・」
「俺は旅で空腹には慣れてる」
「そうかよ・・・」

本当に腹が減っているのだろう。ヴェクサからはいつもの元気さが消えている。

「しょうがないな・・・宿まで歩けよ。俺はお前を担ぐなんてごめんだ」

担げない、とは言わなかった。

「担げンのかよ・・・?」
「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「そ、そうだよな・・・」

その言葉に、なぜか安堵をおぼえる。
まぁ普通に考えても自分より上背があり、自分より格段に体重があるであろう大男を担げるわけがないのだが。

「お前を担げないんなら、あの夜はどうやって「あれ」から逃げ切ったんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

かくして、ヴェクサの感じた安堵感は一瞬のうちにしてなくなり、しばしの絶望を与えたという。