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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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Episode.8 方向音痴



「はー、やっぱもう朝かぁ!」
「朝?」

信じられない気持でヴェクサに続いて外にでる。
どうやら、この出口は街の裏路地に出たようで、ヴェクサの言っていた地下迷路の意味がよくわかった。

「まだそんなに時間が経っていないと思ってたんだが・・・どうなってんだ」
「ここ、時間が無いんだよ」
「地下?」
「あぁ、なんでかな。俺も最近発見した」

まぁ、古代の遺跡というのは未だに未知数なところが多い。破壊しつくされた遺跡でも、その周辺では不思議な事件が起こると聞く。これだけ完璧に残っている遺跡なら、時間が止まっているぐらいが普通なのかもしれない。

「って、今何時だよ・・・」

そう言って、ヴェクサが周りをきょろきょろと見回す。

「確かこの辺に・・・お、あったあった・・・って、あぁ!!!」
「?なんだよ」
「やばいぞ鬨!」
「なんだよ」

時間を確認したかと思うと、いきなり慌てだしたヴェクサに、疑問を抱く。
何がやばいのかと時間を確認しようとするが、自分よりだいぶん上背があるヴェクサに前を遮られては、狭い路地に居る鬨には見えない。

「朝市が始まってる!!」
「はぁ?」

何を言い出すかと思えば、と、鬨が呆れていると、

「朝市だよ!!案内してやるって言ってたろ?!」
「あぁ・・・そう言えばそんなことを「急げ!!!」

いきなり腕を掴まれたと思うと、引っ張られ、自分がヴェクサに引っ張られながら走っていることに気づくまで少しかかった。

「お、おい!」
「ほら、急げって!朝市は待ってくれないぞ!」

振り向きもせずに走りながらそう言うヴェクサからは、楽しそうな雰囲気が漏れ出している。
正直、鬨としてはこのテンションについて行きがたい。
しかし、ヴェクサ個人が楽しそうにしているのは一向に構わないので、自分は自分のペースで行かせてもらおう、と、鬨らしい思考で、考えがまとまった。
そんな鬨の考えなんて知らないヴェクサは、陽気に朝市に向けて足を向けている。

(・・・・・・・・・ん?この道は・・・)

「おい、朝市があるのは向こうじゃなかったか?」
「何言ってるんだよ、こっちだろ」
「いや、お前大丈夫かよ。そっちは街の裏側に出るだろ?」
「・・・・そうだったか?」

まさか・・・という嫌な予感が鬨の中にわき上がる。

「なぁ、お前、もしかして方向音痴?」

外れていてくれという鬨の願いも儚く。

「ン?あぁ、そういやそんなことを言われたことあるな」

その言葉に、身体に力が一気に抜ける。

「お前・・・あの地下で見せた記憶能力はどこへいったよ・・・・」
「ン?あれは記憶すればそのままだからいいんだけどよ、街はいろいろ変わるだろ?」
「そりゃそうかもしれんが・・・そうそう変わるもんじゃないだろ?」
「そうか?結構変わるもんだぜ?」

どんな街だ・・・という突っ込みは心の中にしまっておいた。

「〜〜っ、とにかく、朝市はこっちだ」

頭痛になりそうな頭をおさえ落ち着かせると、今度は鬨がヴェクサの腕を引っ張って歩き出した。

「ほら、あれだろう?」
「お、あれあれ!ンじゃ行こうぜ!」
「あ、おい!」

すぐに見えてきた市場に、またヴェクサがはしゃぎだす。

「お前は本当に25か?」
「おう、正真正銘ぴちぴちの25歳だ!」
「25歳はぴちぴちとは言わな「良いから行くぞ!」

事あるごとに言う事をさえぎられ、いい加減嫌気がさしてきた鬨は、何も言わずについて行くことを決めた。

(そのほうが面倒が少なそうだ)

その鬨の考えは、後に間違いだったと思い知らされることとなる。