小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Juno は きっと微笑んだ

INDEX|8ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

木曜の夜は祭壇に


「じゃぁ、行きますか、隼人さん、麗華さん」
「そうだね、遅くなってもね・・」
下北沢で待ち合わせで、車で赤堤の聖ラファエル教会にだった。なるべく早くにステファンさんに会わせないとって思って今夜になっていた。直美はあいにく遅番のバイトで一緒に行く事はできなくなっていた。
「6時には充分間に合いそうですから・・ゆっくり行きましょうか・・」
「なんか 緊張するんだけど・・」
久しぶりに会った麗華さんが 乗り込んだ助手席から後ろの席の俺にだった。
「大丈夫ですよ。とりあえず、会って話ししてくださいね・・」
「やっぱり、無理なことだったかしら・・ごめんなさいね、劉・・変な事たのんじゃって・・諦めてたんだけど、劉があの教会の知り合いだって話を聞いたら、欲でちゃって・・教会の紹介の記事には、結婚式だけっていう一般人は不可能って書いてあったんだけどね」
「いいんですよ、俺だって、教会式で結婚式あげるなら、ホテルのチャペルなんかよりあそこの教会のほうがいいって思いますから」
「ずーっと、思ってたわけじゃないんだけど、小さい頃にあそこの教会見たことを思い出しちゃって・・綺麗だったから・・お庭も広いし・・」
「へー、そうなんですか・・なんで見たんですかね」
「たぶん、母の知り合いの人の結婚式だったと思うんだけど・・小さかったから・・」
「そうですか・・えっと、びっくりしちゃうといけないから言っておきますけど、100kgのでっかい体で、それで大阪弁しゃべる外人さんですからね・・ステファンさんて・・」
「そうなの・・・でも劉がクリスチャンってのにはビックリしたんだけどね・・」
「えっと、言っておきますけど、正式には信者ってわけではないですから・・ちょっと説明むずかしいけど・・」
「そう・・でも、よろしくね、ごめんね」
「いいえ、ま、お願いしてみてください」
「そうね、お願いしなきゃ・・」
話をうなずきながら聞いていた隼人さんの車は左に折れて、世田谷の住宅街の中に進んでいた。

「車はこのまま、入ってもいいのか、劉ちゃん」
「はぃ、入って左手のところで・・」
まだ、6時前だったので、大きな門の扉も開いていて、そこから中に静かに車を進めて駐車場のスペースにだった。
「なんか 俺、緊張するわ」
「わたしも・・」
隼人さんと麗華さんが車を降りながら声を出していた。
「だいじょうぶですかぁ・・さっ 行きますよ」
少し笑って2人を聖堂に案内だった。ドアを開けると、うっすらとした明かりの中にキャンドルが灯っていた。
「やっぱり、素敵よねぇえ、ねっ すごく綺麗でしょ、隼人・・」
「なんか、いきなり日本じゃないみたいだな・・」
「そうよねー 」
2人が後ろで天井や周りを見ながら声を出していた。
「劉って、ここでの結婚式って見たことあるわけ・・」
麗華さんに聞かれていた。
「ありますよ、ちっちゃいときだけど・・だまって後ろのほうの椅子に座って、あとでお菓子もらってたかな・・まったく知らない人のですけどね」
「どうだったぁー 綺麗だったぁ・・」
「そんなのは見てないですから・・早く終わってなんか食べられないかなぁって事しか考えてませんでしたから・・賛美歌もてきとうに歌ってました。えっと、じゃあ呼んできますね、ここで座って待っててください。すぐに戻りますから・・」
正面の祭壇まで来ていたけど誰も出てこなかったから2人を置いて、隣の部屋に探しにだった。
「あっ 悪いな・・」
「隼人さん いいですから、そこ座っててください、座っての景色もいいですよ、なかなか・・」
「おっ そうか・・」
「はい」
言い終えて、隣の部屋のドアの扉を開けると目の前にすぐに若い神父さんだった。たしか林さんっていう名前の大学生のはずだった。
「あっ、シメオンさん、司祭ですよね・・」
「こんにちわ、それやめてくださいよ、シメオンっての・・劉でいいですから、俺のが年下ですから・・」
「いや、それは呼びづらいんですが」
「うーん、でも、ほら、不良信者だから、俺って・・」
「いいえ、立派な信者さまだと思ってますが・・」
「ま、いいや、なんでも・・で、司祭に約束してあるんですけど・・」
「はぃ、伺っておりますから、こちらへどうぞ・・」
「あっ、じゃぁ、連れがいるんで・・」
振り返ると2人とも話を聞いてたみたいですぐに気がついて、こっちに向かって歩いてきてくれていた。
「では、こちらですから・・」
あいかわらず丁寧な林さんだった。
どうやら、場所は2階のステファンさんの部屋のようだった。
林さんを先頭にゆっくり階段をあがって突き当たりの部屋へだった。
「いやー どうぞー せまいよって、すんませんなぁ・・」
椅子から巨漢を揺らして立ち上がったステファンさんが、こっちに近付きながらだった。
「おじゃまします、こんばんわ、ステファンさん、えっと・・」
「すいません、おじゃまします」
俺に続いて隼人さんと麗華さんが頭をきちんと下げていた。
「あんさんらですな、結婚しますの・・おめでとうさん、幸せでよろしいわ、ええ顔してますな、2人とも・・ま、座りなはれ」
椅子を指差していた。
「すいません おいそがしいのに・・それもこんな時間に・・」
隼人さんがかしこまってだった。もちろん麗華さんもだった。
「あっ あんさん、聖子さん呼んではりましたで・・」
「えっ」
ステファンさんが俺にだったけど、ちょっとビックリだった。叔母に今日ここへ来る事なんか知らせていなかった。
「俺ですよね、それって・・今ですよね、ステファンさん・・」
不思議そうな顔で聞き返すと、なんだか、笑い顔でうなずいていた。やっぱりっかって感じだった。
「じゃぁ、ちょっと行ってきます」
「そやな、そういうことですわ・・あんさん やっぱり頭ようなりましたわ」
「そればっかりですよ、この前からステファンさん・・じゃぁ、隼人さん、隣が親戚の家なんで、ちょっと顔出してきます。戻りますから・・」
「えっ、あ、そうか、うん」
隼人さんは、少し不思議そうな、困ったような顔で返事をこっちにだった。
その向こうにはにっこり顔のステファンさんだった。
「じゃぁ、ステファンさん失礼します」
「ほな、また あとでな・・」
頭を下げて、階段を降りると、紅茶を入れたカップを4つ持った林さんとすれ違いだったから、ちょうだいねって言って、カップを一つ手にだった。
ステファンさんには言われたけれど、叔母さんになんか本当は呼ばれてるはずも無かったから、どうしようかなぁって感じで聖堂に入って、椅子に座って、ゆっくりお茶を楽しむことにした。どう考え立って、こんなところで紅茶の入ったカップを持ってる人間が真面目な信者なわけはないなぁって思っていた。

「いいんですか、ここで・・寒くないですか、ここだと・・」
林さんに声をかけられていた。
「あっ すいません・・ドア閉めるんですか、聖堂の・・」
「はぃ、でも、いいですよ・・そのままで」
林さんはどこか田舎のの教会の子で東京の大学にここから通っているはずだった。
「林さんって、今度4年生ですよね・・」
「はぃ、2年生になるんですね、えっと、劉さんは・・」
「さん・・ってのも、ま、いいけど・・」
どうにも丁寧な林さんだった。