Juno は きっと微笑んだ
うれしいけど困っていた
「おじゃまします、柏倉くん いますか」
カウンターに座って書類の整理をしていると聞きなれた隼人さんの声だった。
「あっ、すいません、もうちょっとなんで、そこに座って待ってもらってもいいですか・・」
「悪いな、いそがしいのに・・車なんだけど、そこ停めちゃったんだけど大丈夫か・・」
「長くなければ、平気です、麗華さんは一緒じゃないんですか・・」
「いや、一緒にと思ったんだけど、今日は俺1人・・」
「そうですか、えっと、直美もすぐ来るんで、座ってください、そこ・・」
「じゃぁ、車で待ってるから・・・」
「あっ すぐですから、すいません」
言い終わると、わかったって顔の隼人さんは、表の車に向かっていた。
「柏倉くん、遠慮しないであがっていいわよ、時間すぎてるし・・あっ 彼女待ちか・・」
石島さんが後ろから声をかけてくれていた。日曜でいそがしかったから、店長も大橋さんもお客様をご案内で外に出かけて、ここに残っているのは、俺と石島さんだけになっていた。シオンコーポレーションは、新しく東京にでてくる子の部屋探しで、大忙しだった。
「たぶん、もうすぐ来るんで、そうしたら悪いんですけど、あがらせてもらいますから・・、あっ 来ちゃったみたいです」
外から手を振ってる直美の顔が見えていた。
「すいません、おじゃまします」
「いらっしゃい、今、帰らせてあげるからね・・」
直美と石島さんが声を交わしていた。
「隼人さん、表の車にいるんだけど・・そこで待ってて直美も・・」
「いっしょに 行くって・・」
「そっか、いま、いくね・・すいません、お先でもいいですか・・」
1人になってしまう石島さんにだった。
「もう、終わっちゃうから・・おつかれさま、また明日ね・・」
「はぃ、では、お先です」
コートを取って、カバンを持って直美と外にだった。直美も一緒に頭を下げてだった。
「すいませんお待たせしちゃって・・直美も一緒なんですけど・・」
「こんにちわ」
直美と一緒にこっちに気が付いて車から出てきてくれた隼人さんに頭を下げながらだった。
「いや、こっちこそ、・・直美ちゃんも久しぶりだね・・乗っちゃってくれる・・少し早いけどご飯でも食べながらちょっといいかなぁ・・」
「はい、いいですよ・・お腹すいてますから・・たぶん直美も・・」
「はい、わたしもです」
俺も直美も笑いながらだった。
「どこか、この辺で車停められるとこあるか、劉ちゃん・・」
「この辺だと無理ですかね・・環7でも出れば、大丈夫かな」
「そうだな、じゃぁ、適当に探すぞ・・」
言いながら車を出して、環状7号にだった。
「で、隼人さん、聞きたい事ってなんですか・・」
後ろの席に直美と座っていたから、少し身を乗り出して聞いていた。
「たいした事じゃないんだけど・・ちょっと大場に聞いたからさ・・ま、そのまえに店探そうや、座ってゆっくりのがいいや・・」
「はぃ、でも、俺も店あんまりわかんないですよ・・」
「いや、ちょっと知ってる店思い出したから・・そこで・・イタリアンなんだけど、いいか・・おいしいぞ」
「いいですねー そこで ご馳走になっちゃいます」
「高くない店だから、おごってやるよ、いっぱい食べな」
直美と後ろの席で、顔を見合わせてにっこりだった。
「コースでいいか・・めんどうだから・・」
ビルの1階のイタリアンレストランに入っていた。ちょっと高そうな店だった。
「はぃ、もう、おまかせします・・」
直美の顔を見ながらだったけど、彼女もうなづいていた。
「肉と魚は、どっちがいいいんだ・・」
「えっと、肉で、直美は・・」
「わたしもお肉で・・」
「じゃぁ、3人とも肉でお願いしますね」
隼人さんが注文を済ませて、にっこりだった。
「食べる前に、相談なんだけど・・いいかな・・」
「いいですよ、結婚の日取りとかはもう決まったんですか・・」
「それは、決まったんだけど・・ちょっと麗華が・・わがまま言ってるんで、それでお願いなんだけど・・」
なんだろうっと俺も直美もだった。
「なんですか・・役にたつかどうかは、わかんないですけど・・」
「うん、大場に聞いたんだけど、柏倉ってクリスチャンなんだってな・・」
「うーん、微妙に違いますけど・・信者ってほどではないんで・・説明むずかしいんですけど・・たしかにクリスチャンネームは持ってるんですけど・・」
直美は少し微笑みながら俺の説明を聞いているようだった。
「うーん、よく、わかんないけど・・赤堤の聖ラファエル教会ってところの信者じゃないのか・・劉ちゃん」
「ま、そんなような違うようなですけど・・」
「大場に、その聖ラファエル教会の名前出したら、そこは劉ちゃんの知り合いの教会ですよって言われたんだけど・・」
「それは 合ってますけど、それが・・あっ・・」
結婚式なのかぁーってやっと気が付いていた。
「あそこで、結婚式するんですか、隼人さんと麗華さん・・」
直美も気が付いたようで、隼人さんと俺の顔を覗き込みながらだった。
「そうなんですか・・隼人さん・・」
「いや、披露宴は京王プラザってことになったんだけど、結婚式はきちんとした教会でって・・麗華が言うんだよ、それも、その聖ラファエル教会でって・・」
「へぇー いいじゃないですか・・」
「それがさぁー・・」
隼人さんは、ちょうど、前菜のサラダみたいなのと、パンと、スパゲッテイーが運ばれてきたので、話を止めていた。
「ま、食べようか、食べながらでいいから・・」
「はぃ、いただきます」
直美も一緒に返事をだった。
「食べながらでいいんだけど、劉ちゃんな、それがさ、あそこってカソリックなんだってな・・」
「そうですね」
おいしいスパゲッティーを口にしながらだった。直美もおいしそうに隣でほうばっていた。
「で、信者じゃないと結婚式は無理らしいんだなぁ・・」
なるほどって思っていた。
「劉、そうなの・・」
「うん、そうだね」
不思議そうに聞いてきた直美に答えていた。
「じゃぁ、ダメなの・・・」
「いや、今から隼人さんも麗華さんも信者になっちゃえば・・。あっ、それは困りますよね、そうですよね・・だから、俺に話なんですよね・・」
「そうかぁ・・そうだよねぇ・・」
隣の直美に覗き込んで言われていた。
「どうにか、ならないかなぁ・・たしかに綺麗な教会で結婚式挙げてあげたいしなぁ・・俺、その、教会さっき、見てきたんだわ・・」
「とっても、聖堂も素敵な教会ですよ、わたしも大好きですから・・」
「直美ちゃんも、あそこの信者なのか・・」
「いいえ、わたしは、遊びに行くだけですから・・信者じゃないですよ・・あそこのステファン神父さんにはよくしてもらってますけど・・」
「なんか、いい解決策ってないかな、劉ちゃん」
目の前の隼人さんは、ほんとうに困ったって顔だった。
「ちょっと、考えて見ますけど、約束はできないですからね・・それでいいなら・・なんとかステファンさんと話はしてきますけど・・いいですかぁ」
「助かるわー その神父さんとは劉ちゃんも知りあいなんだよね・・」
「はぃ、でも、ほんとに約束はできませんからね・・」
「うん、それは いいよ、動き方がわからないってか、まったくわからなくて・・すまないな」
作品名:Juno は きっと微笑んだ 作家名:森脇劉生