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Juno は きっと微笑んだ

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隼人さんの電話



  1981年 <弥生は桜、水無月の 紫陽花までの綴りごと>


「隼人さんと、あした会うの?」
電話を置くと、箸を置きながら直美に聞かれていた。
今夜は土曜だったし、バイトが終わってから買い物を一緒にして、夕飯を食べていた。
「うん、バイト終わってからで良いからって・・下北沢まで出てくるってさ・・」
座りなおして、ご飯を食べながら答えていた。今夜のおかずはハンバーグだった。
「なんだろ・・なんか言ってなかったの・・」
「うーん、ちょっと聞きたいことあるからって、たいした事じゃないけどって・・」
「結婚式の日取り決まったのかなぁ・・それかもね」
「うん、そうかもね、ごちそうさま、おいしかったぁ・・」
「ハンバーグは得意ですからね・・わたしも、ごちそうさま」
「日本茶、コーヒー どっちにする直美」
食器を手に台所に歩きながらだった。
「洗物しなくてもいいよー、わたしやるから・・」
すぐに直美が食べ終わった食器を手に横に立ちながらだった。
「なんか、けっこうこだわってるでしょ・・」
「洗物のこと・・」
「そう」
いつも、洗物を手伝おうとすると、食器を奪われる事がほとんどだった。
「ものすごい理由あるわけじゃないんだけどね・・なんとなく、自分がイヤなだけかな・・洗ってもらって待ってるのが・・それにすぐ終わっちゃうもん洗物・・」
「ふーん」
「劉は、コーヒー入れてね、おいしいの・・そっちのほうがうれしいから、わたし・・」
「では、おいしいのを・・」

「おいしいよ、劉」
コーヒーを口にしながらだった。
「この前、下北沢でコーヒー豆屋さん見つけたから、そこのだよ・・」
「へー、そうなんだぁ、どっち側なの・・」
「北口のおいしいカレー屋さんあるでしょ、そこのちょっと先だから今までしらなかった」
「そうなんだ・・今度連れてってよ」
「いいよー、明日の夕方、バイト終わったら、来ればいいじゃん、直美も一緒でもいいんじゃないかなぁ、隼人さん・・」
「そうかなぁ・・」
「うん、直美のことも聞いてたよ、一緒にそこにいるのかって・・」
「じゃぁ、終わったら行くから待っててよ」
「うん、一緒にご飯も食べちゃおう・・隼人さんにご馳走になっちゃおうか」
「ちゃっかり、してるなぁ・・」
「はい、そりゃぁ もう・・だって、お金持ちだし隼人さん」
「そういう 問題じゃないわよ」
笑いながら怒られていた。
「いつ頃、結婚式するんだろ・・夏ごろまでにかなぁ・・秋になっちゃうのかなぁ・・」
「全然聞いてないんだ・・劉も」
「海にも全然行ってないしなぁ・・それに、隼人さんも今は、あんまり海に来てないって・・大場が言ってた」
「大場君は、元気だよねー寒いのに」
まだ、やっと3月になったばかりだったから、鎌倉の海はまだまだ寒いはずだった。
「バイト以外の日は行ってるらしい」
年末に始めた小学生の塾のバイトをまだ、しっかり続けているらしかった。
「そうなんだ、劉はいかないの・・まだ、足にボルト入ってるし、外してからかなぁ・・」
「それって、いつごろになるの・・」
「春から夏の間らしい・・まだ、だめだって、この前レントゲン見ながら先生に言われた」
「そっかぁ・・入院するの、それって・・」
「どうだろ、1日か2日じゃないの、入院しても・・」
「長くないよね・・」
「切って、縫って、終わりでしょ・・大丈夫じゃないのかなぁ」
「また、切るんだよね・・その足・・ちょっと見せてよ・・」
言いながら、もうスエットをまくって傷跡を見ていた。
「ここの 同じところを また切るの・・」
「同じところは切らないよ・・くっつきにくいはずだな・・」
「そうなんだ・・じゃぁ、この辺かな」
傷跡の横を触られていた。
「そうかもね・・」
「でも、もっと小さいよね、切る長さって・・」
「そうだろ、こんな長くは切らないんじゃないかなぁ・・」
「でも、傷跡2本できちゃうんだね・・」
「ま、スカートはかないし・・いいでしょ」
「そんな事いって、手術して、痛いとかって泣かないでよねぇ」
「泣いてないだろ、この前だって・・」
「えー そうかなぁー 痛いー って言ってたよー」
「それと、泣いてたってのは違うでしょが・・」
「同じでしょー」
まだ、傷跡を直美に触られていた。
「それって、なんか変な感触だから、やめろってば・・」
傷跡の表面の感覚は、微妙に気持ち悪いものだった。少し感覚が遠いって言い方が1番あってる表現のようだった。
「はぃはぃ、なでてあげてるのに・・」
「いいから、なでなくても・・」
「だって、少しつるつるして、感触いいんだもん・・」
「こっちは 少しへんな 感触なんだってば・・」
言いながら捲り上げられたスエットを足元まで下ろしていた。
「ケチだなぁー」
「そういう問題じゃないから・・」
「明日って、麗華さんも一緒に隼人さんと来るのかなぁ・・ずっと会ってないや、わたし・・」
「俺もだなぁ・・卒業試験とかでいそがしそうだったしね・・退院お祝いしてもらって以来だから、直美と一緒だな、最後にあったのは・・」
「そうかぁ 隼人さんと一緒にだったら、4人でご飯食べようね、劉」
「うん、そうだね、5時半までには来れるでしょ、直美は・・」
「そうだね、まっすぐ行くから会社に・・あっ、どうなの・・店長さんは、その後・・」
「やっと、前みたいに戻ったかなぁ・・」
ずっと社長の甥っ子だって事を黙ってたけど、叔父がついに関係をばらしてからあまりにも俺に丁寧で気持ち悪かったけど、この頃やっと、昔のような接し方に戻っていた。
「かわいそうに・・おどろくわよ、店長さん・・」
「うーん、俺のせいじゃないと思うけど・・どっちかというと叔父さんが悪いんだってば・・」
「劉も、言えばよかったのよ、最初に店長さんに・・」
「だって、本社でバイトしてる時も特別に言ってたわけじゃないし・・別に言わなくてもいいかなぁーって思ったんだけど・・」
「うーん、ま、それもそうだけどね・・店長さんはかわいそうだったわよね・・びっくりしてたでしょ」
「びっくりっていうか、どうしましょ、って顔してた」
笑って言うと、直美も笑いながら、かわいそうにって顔だった。
「でも、いい人だよね、店長さんも、大橋さんも石島さんも・・」
「そうだね・・優しいかな、みんな・・」
「うん、わたしにもね優しいよ・・大橋さんもだけど、石島さんは美人だよねー・・」
「そうだね、すんごい美人だよねー」
「まったくぅー・・・普通さぁー そういう時は、そうかなぁー ってとぼけるとこだけど・・」
「えっ・・」
「ま、そこがいいとこか・・劉の・・」
ひとさし指でつつかれていた。あきれた顔だったけど、笑いをこらえた直美の顔だった。







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  「恋の掟は夏の空」・・・高校3年生の夏物語
   「恋の掟は春の空」・・・大学生活に上京
    「南の島の星降りて」
     「恋の掟は冬の空」・・・交通事故で入院中
      「ひとつの桜の花ひとつ」
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