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にわたずみ
にわたずみ
novelistID. 24731
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雨のち快晴

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 俺が雨の夜に怯えるのには、理由があった。雨の夜は俺の、大好きな人を奪っていく。
 小学生の時、俺は父、母、兄を雨の夜に失った。俺が外食したいと騒ぎ、家族4人で出かけた夜だ。スリップしたトラックに巻き込まれ、家族全員で事故に遭った。俺は偶然窓から投げ出され、一人だけ無事だった。気づくと、怪我で身体中が痛い中、目の前で自分の家族が、車と一緒に燃えている。俺が我が侭を言わなければ。そんな思いで一杯になり、ずっとあの光景が頭から離れない。
 そんな俺の、雨の夜への脅えが加速したのは元彼達が原因だ。雨の夜に脅える俺を見て、こんな面倒な奴だとは知らなかったと去って行ったのだ。そのうちの一人は、そんな俺につけこんで、慰めるフリをしてひどく抱き、結局同じ理由で雨の夜に去って行った。
 それから俺は誰にも、雨の夜には近づかせない。隠して、隠して、一人うずくまる。もうこれ以上、好きな人がいなくなるのは耐えられなかった。
 家に着くと、靴を適当に脱ぎ散らかし、寝室に急いだ。ヘッドホンをつけ、シーツをかぶり、部屋の隅にうずくまる。それでも雨の音が追いかける。手足だけでなく、身体全体がガタガタ震える。シーツごと自分の身体を抱き締めた。
「う…。」
汗と共に涙が静かに落ちていく。雨の夜に慣れることはない。最近では小降りや普通の雨の日にはほとんど起きないが、家の中まで雨音が聞こえるような雨の日はいつもこうだ。
「拓…。」
拓に会いたい。会っちゃいけない。傍にいて欲しい。見ないで欲しい。頭の中を思い出と拓の顔が駆け巡る。ぐるぐるぐるぐる。余計に震えを引き起こす。

作品名:雨のち快晴 作家名:にわたずみ