氷解き
母と姉は息子を心配し、絹の元へと相談に訪れた。
その晩のことを訊ねると、二人が明日の天気を占うために氷解きを行い、いざ鹿の骨で氷を叩き割ろうとした時、ぬうと息子が現れて、なんでも硯を落として氷を砕いてしまったそうだ。
そうすると氷の割れ目から、白銀の狐が一匹躍り出た。
狐は部屋をぐるりと回って息子の首に巻き付いた。ケーンと一声高い声で鳴くと、家の外へと飛び出した。後は絹の見た次第であった。
母と姉が事情を話し終えると、絹は昨晩桶に張ったばかりの氷を持って来た。昨夜は新月が空に浮かんでいた。
それを使って息子の消息を捜し当てようと言い出して、あっという間に氷解きを終わらせた。
どうやら息子は北の林の中ほどにある、ブナの木の根元に居るようだった。