看護師の不思議な体験談 其の八
次の日の朝、あくびをしながら部屋を出た。大きく伸びをし、廊下の窓から外を見ると、ちょうど朝日が昇り始めたところだった。ふと、隣の病室のネームプレートを見たが、名前がなかった。
(あれ…?)
通りかかった夜勤明けの同僚に話を聞いてみた。
あの音は何だったのか。
私の質問を聞いて、ギョッとした顔の同僚。
(あぁ、もしかして聞かないほうが良かった内容かも…)
後悔遅し。
生意気な後輩も、私の出番とばかりに話題に入ってきた。
「えーっ!杉川さん、マジっすか。超怖いーっ!」
いつもオーバーリアクションな後輩。両手を口に当てながら、怖い怖いと言いながら笑っている。
「その部屋の患者様、1週間前ステッたんです。」
「えっ…」
(じゃあ、昨日聞いた音は何だったんだろう…)
「ていうか、そんな亡くなりそうな状態の患者様っておったっけ?」
「杉川さんがしばらく休んでいる間に、上の病棟から転棟されてきた方で…。」
話を聞くと、かなりユニークな方だった。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の八 作家名:柊 恵二