水底
家に帰るとやはり魚がいるのだろう。
そう考えながら帰路を辿った。ヒロタさんが話した奥さんの魚の話が、頭の隅にこびり付いていた。
家に居る魚も赤いものならば、もう少しかわいく思えたのかもしれない。
マンションの前でふと自分の住まう部屋がある、3階の角の方を見上げた。
電気がついている。
朝に消し忘れて出かけたのか、それにしても今朝は晴れていたので、電気を付けた覚えなどなかった。
もしかしたら、帰って来たのかもしれないと思った。
部屋の合鍵を持っていた相手は、白い封筒に鍵を入れ、それをキッチンの流しに置いて出て行った。
薄く期待をしていることが、ひえびえとして感じられた。
おおよそ魚が部屋の隅から動き、電源に触れたのだろうと思い直した。